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NPBアンチ・ドーピングガイド2019

ダニエル・リオス氏のアンチ・ドーピング規則違反に関する異議申立てに対する判断

2008年9月2日

  • ダニエル・リオス 殿
  • 日本プロフェッショナル野球組織
  • アンチ・ドーピング調査裁定委員会
  • 委員長 加藤良三
アンチ・ドーピング規則違反に関する異議申立てに対する判断
第1 結論

当委員会が2008年6月28日にした制裁処分を維持する。

第2 理由

1 序

当委員会の貴殿に対する2008年6月28日付け制裁処分(以下「本件処分」という。)に対し、貴殿より、NPBドーピング検査実施要綱15条1項に基づき、2008年7月2日付けで、異議申立てがされ、同年7月11日に、貴殿に対し、弁明の機会が与えられた。 貴殿からは、本件処分前に、2008年6月19日付け上申書(添付資料付き。以下「上申書」という。)、6月26日付け連絡文書(添付資料付き)、本件処分後に、2008年7月10日付け弁明書(添付資料付き。以下「弁明書」という。)、7月18日付け連絡文書、7月28日付け「ダニエル・リオス/検査機関の件」と題する文書、8月22日付け「ダニエル・リオス選手/脂肪燃焼系サプリメントの検査について」と題する文書が提出され、当委員会にて、これらを慎重に検討したが、以下の通り、本件処分を維持すべきであるという結論に達した。
(なお、貴殿は、弁明書、2008年7月18日付け連絡文書及び同月28日付け文書等において、米国の検査機関において、貴殿が摂取したという脂肪燃焼系サプリメントの検査をする旨述べていたが、2008年8月22日付け文書により、検査を行わない意思を表明した。)。

2「アンチ・ドーピング規則違反」の成立について

貴殿に対するドーピング検査は適正に行われ、その結果、蛋白同化薬として禁止物質に指定されているハイドロキシスタノゾロール(hydroxystanozorol)(以下「検出薬物」という。)が貴殿の尿検体から検出されたことは、2008年6月28日付けの貴殿に対する制裁の通知において認定されたとおりであり、これらの事実については、貴殿も争っていない(弁明書においても、「処分の軽減」を求めるのみである。)。 したがって、貴殿の「生体からの検体に、禁止物質、あるいはその代謝物又はマーカーが存在すること」は明らかであり、貴殿にNPBドーピング禁止規程2条1項が参照する世界アンチ・ドーピング機構(以下「WADA」という。)の定めた「世界ドーピング防止規程」2.1条所定の「アンチ・ドーピング規則違反」が成立することは疑いがない。

3 貴殿の弁解について

他方、貴殿は、検出薬物を摂取した可能性として、「 (1)2007年11月上旬から同年12月中旬の意思による背中痛の治療目的での注射による服用、 (2)ドーピング検査日に近接した日時の脂肪燃焼系サプリメントによる誤飲の2つのいずれか 」を挙げている(弁明書6頁)。

しかしながら、スタノゾールの半減期が1日であることからすると、検出薬物の摂取が上記(1)による可能性は、限りなく絶無に近い(貴殿の上申書3頁も、「可能性は低い」と述べている。)。

また、貴殿は、米国内で販売されたサプリメントで、日常の品質管理のプロセスの一部として禁止薬物の検査をしていないと思われる会社が製造した、よく売れているブランドの種々のサプリメントを英国の会社が調査したところ、その4分の1にはステロイドが含まれていたという米国の新聞のホームページの記事を提出しているが、検出薬物は、日常人間が体内に摂取する飲食物に含まれるものではなく、(2)についても、貴殿が、ドーピング検査日に近接した日時に、何らかのサプリメントを摂取したというだけであり、貴殿が摂取したという当該脂肪燃焼系サプリメントに検出薬物が含まれていたことに関し、具体的な可能性が何ら示されているわけではない(貴殿が摂取したというサプリメントに検出薬物が含まれているかどうかの検査を、貴殿の意思により貴殿が取り止めたのは前述のとおりである。)。

このほか、本件において検出薬物が体内から排出される別の可能性を具体的に示す事情は見当たらない。

したがって、本件においては、貴殿が誤って検出薬物を摂取したことを示す事情は見当たらないといわざるをえない。(何れにせよ、禁止薬物を体内に摂取しないことは選手の基本的な義務である。)

4 処分選択の合理性について

  1. (1)スポーツにおけるドーピングの防止については、2005年10月第33回国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)総会において「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」(以下「規約」という。)が採択され、2007年2月1日に発効するなど、国際レベルにおけるドーピング防止の取組みが一段と進展している。
    我が国においても、2006年12月27日に規約を締結したところであり、文部科学省においては、我が国におけるドーピング防止活動の一層の推進を図るため、「スポーツにおけるドーピングの防止に関するガイドライン」を策定し、国内ドーピング防止機関及びスポーツ団体は、上記ガイドラインに沿って、ドーピング防止活動を実施することとされている。
    ドーピングは、選手の健康を害することとなるばかりでなく、他の選手との関係でアンフェアなものであり、スポーツ競技そのものの価値、評価を損なうものである。そして、青少年の憧れの対象であるプロ野球選手が、このようなドーピングをすることによる青少年に対する悪影響は計り知れないものがある。 また、社会的にドーピングに厳しい眼が向けられていることは、マス・メディア等の取扱い方からも明らかである。 以上のような事情に鑑み、日本プロフェッショナル野球組織は、ドーピングに対しては、断固たる態度で臨むことを基本としている。
    ところが、このような状況にありながら、貴殿は、前記のとおり、アンチ・ドーピング規則違反を犯し、しかも、誤って検出薬物を摂取したことをうかがわせる事情もなく、(今回のドーピングとは関係がない上記「(1)2007年11月上旬から同年12月中旬の意思による背中痛の治療目的での注射による服用」について反省の弁を述べるものの)今回の検出薬物摂取についての具体的な反省の弁もない。 このようなことをも考え合わせれば、その情状は重いものといわざるを得ない。 したがって、貴殿が謝罪の意思を表明していること、以前このような処分を受けたことはなく、また、禁止物質を常習的に使用したとも認められないことを考慮しても、上記処分程度の処分はやむを得ないものといわざるを得ない。
  2. (2)貴殿が、弁明書等において述べた処分の相当性に関する主張に対しては、以下のとおり判断する。
  1. (ア)各国プロスポーツ団体との比較について(弁明書の「理由(1)」)
    貴殿は、米国大リーグ、米国プロフットボールリーグ、米国プロバスケットボールリーグ、米国プロホッケーリーグ、韓国プロ野球リーグ及び台湾プロ野球リーグ等の各国のプロスポーツリーグに比して、 (1)処分の基準が極めて曖昧・不明確であり、 (2)現実に下された処分が極めて重く、かつ、 (3)手続的保障が不十分・不明確であると主張する。
    まず、(1)(処分の基準の明確性)について述べる。 処分の基準が明確かどうかは、処分が重過ぎるかどうかとは関係がないから、処分の軽減を求める異議の趣旨に照らし、そもそも主張自体が失当であるといわざるをえないが、その点を措いても、具体的な処分の内容については、当該案件に関連する諸般の事情を考慮したうえで、具体的な妥当性のある判断を下すことが望まれるのであり、処分を一律にする(例えば1回目の違反が50試合の出場停止となること)が必ずしも最善の手段であるとはいえないものである。
    次に、(2)(現実に下された処分が極めて重いとの主張)について述べると、 ドーピングの防止についてどのような取組みをするかは、各国あるいは各競技団体が決すべきことであるところ、日本プロフェッショナル野球組織は、上記のとおり、プロ野球選手が禁止薬物を摂取することについては、厳正に対処する所存であり、他の競技団体で軽く取り扱われているという理由により、処分を変更する理由を認めない。
    なお、WADAの基準によれば、本件の貴殿の行為は、「世界ドーピング防止規程」10.2条により、「2年間の資格剥奪」に相当するものであり、ことさら本件処分が重きに失するとは考え難いことを付言する。 この点につき、貴殿は、WADAの基準を参考にするのは「違法」であると主張する。WADAの基準を参考にすれば、本件処分は、「2年間」の出場停止になるべきであり、本件処分は、WADAの基準を参考にしたものではない。 さらに、貴殿の主張は、他のプロスポーツの基準は参考にすべきであるとしながら、WADAの基準に関する条項はNPBドーピング禁止規程で準用されていないから、WADAの基準を参考にするのは「違法」であると述べるものであり、この論法によれば、他のプロスポーツにおけるドーピングに関する規程も、NPBドーピング禁止規程で準用されていないのであるから、参考にしてはならないということになるはずであり、採用することはできない。 また、以上の点に関連し、貴殿は、WADAの基準は、本来的にはアマチュアスポーツを予定していると思われ、選手がスポーツを職業とし生計を立てるプロスポーツリーグとの本質的な違いに十分留意する必要があると主張するが、プロスポーツ選手であるからこそ、フェアプレイとスポーツマンシップにおいて、青少年を含む国民の模範となるよう努めるべきであり(統一契約書17条参照)、プロスポーツ選手の場合に、アマチュア選手よりもドーピング禁止規程の違反に対する制裁を軽くすべきであるという主張は、認めることができない。
    また、貴殿は、「違反事実が存在したことのみをもってドーピング違反選手の選手生命を失わせるに等しい厳罰を科す運用となっており極めて不当である」とか、今までの事例における処分のすべてが、いずれも「1年以下の公式試合の出場停止」であり、NPBドーピング禁止規程5条(2)に列挙されている「譴責」や「1試合以上10試合以下の公式試合の出場停止」の他の制裁処分が適用されていないのは不当である旨主張している。 しかしながら、過去の事例は、「1年以下の公式試合の出場停止」のうちでも、出場停止期間が、その事件の具体的な情状に合わせて、20日間と1年間と大きく異なっているのであるから、違反事実の存在のみで厳罰を科したものではないし、また、少なくとも先発投手に関しては、(貴殿が適用されていないという処分に含まれる)10試合の公式試合の出場停止のほうが、(実際に科された)20日間の公式試合の出場停止より実質的に重いのであるから、貴殿の主張は当たらないといわざるをえない。
    なお、貴殿は、「厳罰を科す運用」は、「選手の予見可能性を奪い、過度に萎縮した行動を余儀なくされる」とか、「NPBにおける処分のみが1年間という長期にわたることは、・・・他国のプロ野球球団の萎縮効果が大きく不当」であるとも述べている。 しかしながら、前記のようなドーピングの問題の重大性に照らせば、選手が、故意又は過失により禁止物質を摂取しないように最大限注意することに関して、「過度に萎縮した行動を余儀なくされる」という理由で非難することは適切ではない。 また、貴殿が主張するように、ドーピングに対し、「NPBにおける処分のみ」が重いというのであれば、他国では、日本で犯したドーピング規程違反行為が、軽く評価されるはずであり、「他国のプロ野球球団の萎縮効果が大きく不当」であるという主張は理解し難い。
    さらに、上記(3)(手続的保障が不十分・不明確であるとの主張)については、当委員会は、貴殿に対し、再度の主張立証の機会を与え、代理人による2008年7月10日付け弁明書の提出を待ち、さらに、貴殿が希望していた成分の調査の結果が提出されるのを待って、貴殿による調査の中止の連絡を受けた後に、今回の判断をするものであり、手続的保障の点については、十分配慮されたものである。
  2. (イ)「本件事例の真相解明」(弁明書における理由(2))について
    貴殿は、貴殿が望む成分の独自調査の結果をふまえて制裁処分を決定すべきであると主張していたが、貴殿が任意に調査を中止したのは、前記のとおりである。
  3. (ウ)他の主張について
    なお、上記で直接言及しなかった貴殿の他の主張についても、当委員会において検討したが、特に、本件処分を軽減すべきであるという結論に達しなかった。

よって、第1項の通り判断する。

以上