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【コラム】古巣に強烈な恩返し!生まれ変わった日本ハム・大田泰示

 古巣に強烈な“恩返し”を見せた。6月10日の巨人戦(札幌ドーム)。「一番・DH」で先発出場した日本ハムの大田泰示は初回、1ボール1ストライクからの3球目、田口麗斗が投じた153キロの高めストレートにバットを振り抜いた。快音を残した打球は大きな弾道を描いてバックスクリーンへ。グッと表情を引き締めてダイヤモンドを一周した大田は、本塁を踏むとバンバンッと手を叩き、雄たけびを上げた。

 「野球人生の中でも価値のある1本。忘れられません」

 6回には左前打を放ち、1点ビハインドで迎えた8回無死一塁では中前打でチャンスを広げ、中田翔の逆転二塁打を呼び込んだ。3安打猛打賞で3対2の勝利に貢献し、栗山英樹監督に球団史上3人目の通算400勝をプレゼントした。

 2009年ドラフト1位で巨人入団。松井秀喜氏の背番号55を受け継いで大きな期待がかけられたが、定位置をつかむことはできなかった。名門球団のプレッシャー、周囲の厳しい目。期待に応えようとするも空回りする日々が続いた。

 「『僕はこういう選手にならないといけないんだ』と勝手に高い理想を作って、そこでがんじがらめになっていた。もちろん、注目してもらえるのは幸せなことなんですけど、一方でそれがプレッシャーになっていたのも間違いないです」

 昨オフ、日本ハムにトレードで移籍。新天地の自由でノビノビとしたチームカラーがマッチした。日本ハムは自主性を重んじるが、裏を返せば高いレベルで自己管理が求められる。大田も札幌ドームのナイター前にロングティーを行うなど、自分でできることを考えて実践。「自由」を与えられ責任が増して、その才能が開花した。

 翌日の同カードでも「一番・左翼」でスタメン出場し、3回に先制のきっかけになる二塁打、7回にダメ押しとなるソロアーチを右翼席へ放り込んだ。「邪念をなくして臨んで、自分のスイングができました」。巨人3連戦で計10打数7安打、2本塁打、2打点と大爆発。巨人の高橋由伸監督も「同じ打者に何度も打たれては話にならない」と嘆くしかなかったが、6月12日現在、38試合に出場し、打率.275、8本塁打、20打点をマークする実力は本物だ。

 新天地で泥臭く、前だけを向いて進んできた大田。「“一新”という気持ちだけです」。トレード直後、このように決意を口にしていた。もはやチームに欠かせない存在だ。まさに生まれ変わった姿が北の大地にある。

【文責:週刊ベースボール】