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【コラム】阪神生え抜き2人目の快挙!“不屈の男”鳥谷敬

 阪神の生え抜きとしては藤田平以来となる大記録を本拠地・甲子園で決めた。9月8日、DeNA戦、2回一死一塁。鳥谷敬が井納翔一のスライダーを叩いた打球はライナーで右中間を破る適時二塁打となった。史上50人目の2000安打の達成だ。球場に詰めかけた4万5505人の大観衆は拍手喝采。鳥谷は二塁ベース上でヘルメットを取って歓声に応え、早大時代に二遊間を組んだ1年後輩のDeNA・田中浩康から花束を渡されると笑みを浮かべた。

 「最初の1本というのが一番、印象深いですね」

 2004年4月2日の巨人戦(東京ドーム)、新人ながらこの開幕戦に「七番・遊撃」でスタメン出場した鳥谷。8回に前田幸長からプロ初安打を左前へ放った。同年の後半には遊撃のレギュラーに定着。そこから今に至るまで連続試合出場も続けている。

 しかし、“虎の鉄人”に今季、最大のピンチが訪れた。5月24日の巨人戦(甲子園)、5回裏。左腕・吉川光夫のすっぽ抜けた144キロ直球が鳥谷の顔面右側付近へ直撃。悲鳴の後に静寂。金本知憲監督が血相を変えて一塁ベンチを飛び出す。うずくまって動けなくなった鳥谷の姿に、誰もが息をのんだ。大量の血が鼻から流れて止まらず、そのまま途中交代して兵庫・尼崎市内の病院へ。「鼻骨骨折」。2カ所が折れている重傷だったが……。

 翌日の同カード、5点リードの6回二死、甲子園の観客が絶叫した。代打で鳥谷が登場。顔面は紫色にはれ上がったまま。動けばすぐ鼻から出血する状態だったが黒いフェースガードを装着し、打席へ歩を進めた。桜井俊貴の前に三ゴロに倒れたが、150キロ近い直球に対して果敢に打ちに行き、2球、ファウルとしていた。

 昨季途中に不動だった遊撃レギュラーの座を奪われ、2012年から務めていたキャプテンの座も降りた。それでも決して下を向かない。鳥谷の不屈の闘志に後輩たちは心を揺さぶられた。

 プロ2年目の2005年、優勝を経験していた鳥谷。チームは10年以上、美酒から遠ざかっているが以前、鳥谷は次のように語っていた。

 「若手に一度優勝を経験させてあげたい。今は何となく『優勝したいな』と思っている感じでしょう。ただ、一度経験して“明確な目標”になると、シーズンのしんどいときでも乗り切れるはず。僕がユニフォームを着ている間に、その力になれるようにしたい」

 2000安打を達成した翌日のDeNA戦(甲子園)で鳥谷は延長12回裏、サヨナラ打。2001安打目は劇的な一打となった。“虎の鉄人”はこれからも、チームのために戦い続ける。

【文責:週刊ベースボール】