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【コラム】上位進出をうかがう燕軍団で大きな力となるベテラン・坂口智隆のひたむきな姿勢

 ヤクルトの今季初となる4連勝は33歳のベテランのバットから生まれた。6月2日、楽天戦(楽天生命パーク)。2対2の同点で迎えた8回表、二死三塁で打席に入ったのは坂口智隆だった。相手エース・則本昂大にここまで13三振を喫していた燕打線。「チャンスは少なかったので何とかしたかった」と集中力が最高潮に達していた坂口が、1ストライクからの2球目、抜けが悪かったフォークボールをとらえた。打球は鋭く左中間を抜け、決勝の適時二塁打に。「打てると思った球をいくだけ。空振りを恐れずに食らいつこうという気持ちでした」と言った坂口を、小川淳司監督も「よく打ってくれた」と手離しで称賛した。

 2003年、神戸国際大付高からドラフト1巡目で近鉄入団。04年の球界再編騒動を経て、05年、オリックスへ。11年に175安打をマークして最多安打のタイトルを獲得したが、12年に右肩肩鎖関節脱臼とじん帯断裂の大ケガを負い、徐々に出場機会を減らしていった。一時は1億円以上あった年俸(推定)も、15年オフに減額制限を大幅に超えるダウンを提示され、自由契約を申し出てヤクルトへ。だが、この不遇の時代も坂口は前向きにとらえている。

 「試合途中から出る準備の仕方や、その難しさ、気持ちの持ち方も勉強できました。そういう経験も生かしながら、途中から出ても何とかアピールできるようにということも学びました。だから、すべてがプラスになっていますね」

 逆境も自分を成長させるチャンスと発想を転換するのが坂口の真骨頂だ。移籍1年目の一昨年、141試合に出場して打率.295と復活し、昨年も.290をマーク。しかし今年、メジャー・リーグから青木宣親がチームに復帰。外野の定位置争いが激化し、坂口もレギュラーが安泰とは言えなくなっていた。首脳陣は新オプションとして春季キャンプで「一塁・坂口」を考案。小、中学以来、一塁の守備練習を始めた坂口だが、ネガティブな感情は一切なかった。

 「とにかく『うまくなりたい』の一心で練習しました。スタメンで試合に出るということが、僕の求めている部分なので、チャンスは泥臭くつかみにいくつもりでした。チャンスの幅を広げてもらえたのは、プレーヤーとしてありがたいことでした」

 4月3日の広島戦(神宮)では6回一死一、二塁の場面で一塁ゴロを捕球したが、一塁ベースカバーに入った原樹理に悪送球。一気に2点を奪われるミスを犯した坂口は、打撃投手に「(守備練習を)手伝ってください」と懇願。翌日以降、試合前のグラウンドには投内連係を繰り返す坂口の姿があった。

 野球に対する真摯な姿勢は誰もが認めている。6月3日現在、セ・リーグ打撃成績3位の打率.337とバットも好調。自由契約選手が首位打者となれば史上初の快挙だが、それよりも坂口が欲するのは勝利の2文字だ。

 「個人的な数字よりも、チームに貢献するプレー、勝ちに貢献するプレーがしたいです」

 昨年、球団史上ワーストの96敗と屈辱を味わったヤクルト。今年も現在、最下位だが交流戦は5勝1敗と好スタートを切り、2位・DeNAまで2ゲーム差に迫っている。巻き返しを誓う燕軍団。坂口のひたむきな姿勢は大きな力となるはずだ。

【文責:週刊ベースボール】