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【コラム】球団史上8人目のサイクル安打 攻守走で高い技術を誇る中日・平田良介

 「本当はいけないんですけど、自分の打席が回って来る前の守備から打撃のことばかり考えていました」と試合後、茶目っ気たっぷりに話した。8月16日のDeNA戦(ナゴヤドーム)、7回表の守備。その裏、打席が回ってくる中日・平田良介はある記録を意識せざるを得なかった。この試合、「一番・右翼」で出場した背番号6は初回に本塁打を放ち、2、4回には二塁打、5回には三塁打をマーク。単打が出ればサイクル安打となる状況だった。

 そして、7回一死の第5打席。スタンドのファンからは「サイクルコール」が沸き起こったが、その声援に後押しされたかのように打球が見事に三遊間を破った。プロ初の5安打となる左前打でプロ野球史上73度目、68人目のサイクル安打を決めた。今季は柳田悠岐(ソフトバンク)、山田哲人(ヤクルト)、桑原将志(DeNA)に続く4人目。球団では2016年7月20日の広島戦(マツダスタジアム)で大島洋平が記録して以来8人目の快挙だった。

 平田の勢いは止まらない。翌日からの巨人戦(東京ドーム)で4安打、2安打、3安打。8月20日現在、打率も.347と急上昇し、鈴木誠也(広島)に1分差をつけてセ・リーグ打率部門でトップを走る。平田自身は「タイトルは残り8試合くらいまで意識しない」と言うが、初の首位打者に向け視界は良好だ。

 平田の魅力はバッティングだけではない。足も大きな武器となっている。前半戦の終盤に足を生かしたシーンがあった。7月7日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)。1点リードした8回一死二塁、中尾輝から放った打球は左翼・バレンティンの頭上を越えた。普通なら二塁打になる当たりだが、「送球を見て、あの位置からなら(体が)逆回りになると思ってサードまで走りました」。同じ外野手としての視点を生かし、バレンティンの守備を瞬時に判断した平田は二塁ベースを蹴って三塁へ到達。適時三塁打で大きな追加点をもたらした。

 1つ先の塁を奪う。積極的な走塁は、試合の流れを変えることがあるということを分かっているからこそ、1つ先の塁を許すことを防ぐプレーにもまた心血を注ぐ。8月20日現在、補殺数はセ・リーグの外野手で鈴木と並びトップの7。打球を捕り、小さなテークバックから低く、強く、ボールを投じる。「捕ってから素早く投げられる」と長嶋清幸外野守備走塁コーチも評価。平田も「僕は特別に肩が強いわけではない。その分、練習でも捕ってから早く投げることを意識しています」と言う。

 コントロールの正確性もチーム随一だが、その原点は大阪桐蔭高3年の9月に出場したアジアAAA野球選手権にあった。右肩関節唇損傷のケガを負ったことで、肩に負担をかけず、素早い送球フォームを模索。その結果として「今の投げ方になった」という。

 攻守走で輝きを見せる平田。唯一無二の存在感を放つ男は、近年低迷が続く竜を復活させるキーマンであることは間違いない。今後もチームのために懸命にプレーする。

【文責:週刊ベースボール】