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【コラム】巨人首位躍進の立役者!投手3冠を独占する山口俊のフォークの秘密

 抜群の安定感を発揮した。6月29日のヤクルト戦(秋田)。交流戦が終わり、リーグ戦再開の初戦、巨人先発の山口俊は7回3安打無失点とヤクルト打線を寄せ付けず、ハーラーダービートップタイの8勝目をマーク。防御率1.99、勝率.800もリーグ1位に躍り出て、投手3冠を独占した。この日はプロ通算1000投球回もクリア。奇しくも6月29日は横浜(現DeNA)時代の1年目にプロデビューを飾った日。13年前の2006年、巨人相手にプロ初先発を果たし、初勝利をマークしていた。

 「まだまだ通過点だと思っているので1試合でも、1イニングでも多く投げられるよう頑張ります。初勝利が巨人戦で、巨人のユニフォームで1000回を投げられたのは良かったと思います」と笑顔を浮かべた山口。この日は降雨のため、試合開始が約30分遅れたが、ベテランらしく、その影響はみじんも感じさせなかった。さらに、「こういう(柔らかい)マウンドはフォークが投げづらいので、三振よりも前に打たせようと思った」と言うとおり、直球とスライダーを軸に攻めたことも功を奏した。

 ただ、この日はフォークを使う割合が抑えめだったが今季、好調を保っているのはキレ味が鋭いフォークのおかげでもある。通常は投球の約4分の1を占めるフォーク。横浜時代、佐々木主浩やコーチにアドバイスをあおぎながら磨いていった。さらに2014年、抑えから先発に転向するにあたって、球種を増やすことを模索した際、「フォークの落ち幅をコントロールすれば、それだけで2球種になる」という考えに至り、投げ分けるようになった。

 大きな変化のフォークは意識して空振りを奪うボールで、三振が欲しい場面で多用。究極の理想は大魔神・佐々木。テレビゲームの世界のように打者の手元まで直球と同じ軌道を保ち、ギリギリのところで垂直に落とすイメージだ。

 一方の小さな変化のフォークはゾーンの中で小さく落として、打者のタイミングを外すボール。イメージとしては、スプリットフィンガードファストボールに近い、落ちるツーシーム。状況にもよるが、空振りを狙うのではなく、ゴロを打たせる目的で使うことが多く、打者に手を出させて凡打にすることがベストだ。

 習得するためにブルペンで練習を繰り返し、試合でも勇気を出して試していった。本番のマウンドで結果が出ないと自信は持てないからだ。単にブルペンで落ちているからといって、すぐに試合で使えるわけでもない。打者のリアルな反応を見て改良を加えていくことが重要だ。現在では150キロを超える力強い直球とのコンビネーションが冴え渡る。大小2種類のフォークの変化を意図的にコントロールし、自在に「空振り」「凡打」を奪う決め球となっている。

 今季はエースの菅野智之が7勝を挙げながらも防御率4.39と安定感を欠く中で、移籍3年目の右腕の頼もしい投球が首位に躍進するチームを支えているのは間違いない。7月1日には監督推薦でオールスターに2年ぶり4度目の選出となった。16年はケガのため辞退しているから、出場となれば2011年以来8年ぶり3度目だ。

 「真っすぐが自分の魅力だと思うので、普段できない力と力の勝負ができればいいかなと思います」とパ・リーグの強打者と真っ向勝負を誓う山口。夢の舞台で勢いをつけて、後半戦に弾みをつける。

【文責:週刊ベースボール】