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【コラム】先輩スラッガーを超える本数で本塁打王へ、25年ぶりの歓喜を呼び込むオリックス・杉本裕太郎

 体勢は崩されていたが、打球はバックスクリーン左へ飛び込んでいった。10月7日の日本ハム戦(京セラD大阪)。オリックスの四番・杉本裕太郎は伊藤大海が投じた外角高め152キロの直球にバットを振り抜いた。一時同点となるソロは今季30号。「少し泳いでいましたし、外野の頭は抜けてくれるかな、と。スタンドまで届くとは思っていませんでした。(30本塁打は)目標にしていた数字でしたし、素直にうれしいです!」。チームで30本塁打を記録したのは2017年に31本塁打を放ったT-岡田以来4年ぶり。日本人右打者では1990年の石嶺和彦の37本塁打以来31年ぶりだ。

 ただ、杉本は「まだT-岡田選手の33本に負けているので。その数字に勝てるように頑張ります!」と新たな目標を見据える。“33本”とは2010年にT-岡田が本塁打王に輝いた際の数字だ。10月11日現在、杉本も2位・柳田悠岐(ソフトバンク)に3本差でホームランダービートップを走る。先輩スラッガー超えを果たして本塁打王に輝き、そしてチームを優勝に導く。杉本は今、熱く燃えている。

 最下位に沈んだ昨年から一転して、今年は首位を快走。戦前の下馬評を覆す快進撃を見せるオリックスを四番として牽引する杉本はJR西日本から2016年にドラフト10位で入団した。身長190センチ、104キロと恵まれた体格。身体能力に誰もが目を見張ったが、好不調の波が激しかった。変化球にもろく、スランプに入ると簡単に抜け出せない。一軍になかなか定着できなかったが野球人生の転機は昨年だった。開幕二軍スタートだったが、西村徳文前監督の退任を受けて中嶋聡二軍監督が監督代行を務めることになると「一緒に行くぞ」と伝えられて一軍に昇格。打率.115まで落ち込んだこともあったが、中嶋監督代行は我慢強く使い続け、杉本も打席に立ち続けることで対応力を高めた。

 今季、正式に“中嶋監督”に昇格しても、指揮官は開幕から杉本を起用し続けた。「打てんかったら二軍やな、とか、そんなことも思っていたんです。だけど、我慢して使ってくれた。安心感ではないですけど、心に余裕が持てたんです。甘いボールをファウルにしたら『うわぁ』と思っていたんですけど、今は『ファウルでいい。またチャンスがある』と思えるんですよね。それって、やっぱり我慢して使ってもらえているからかな、って。だから、監督のためにも頑張らないとダメなんです」と杉本は感謝する。

 この“気持ちの変化”が好成績につながっている。

 「技術もメンタルとの連動ではあるんですけどね。どうしても打ちたい、打ちたいと思い過ぎると、上体だけでボールを追いかけてしまう。そうならないためにも、下半身や体幹を使って打つ。気持ちと技術のバランスが、しっかり取れているのが大きいと思います」

 愛称は漫画『北斗の拳』で大好きなキャラクターのラオウ。本塁打後にベンチ前で拳を突き上げる「昇天ポーズ」がすっかり板についてきた。青学大の後輩で打線の軸だった吉田正尚が右尺骨骨折で負傷離脱中だが、覚醒した背番号99がチームに25年ぶりのリーグ優勝を呼び込む。

【文責:週刊ベースボール】