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NPBアンチ・ドーピングガイド2019

井端弘和選手のアンチ・ドーピング規則違反に対する制裁の通知

2011年9月1日

  • 株式会社中日ドラゴンズ
  • 代表取締役社長 坂井克彦 殿
  • 中日ドラゴンズ
  • 選手 井端弘和 殿
  • 日本プロフェッショナル野球組織
  • アンチ・ドーピング調査裁定委員会
  • 委員長 加藤良三
アンチ・ドーピング規則違反に対する制裁の通知
第1 制裁の内容

井端弘和選手に対し、譴責処分を科する。2011年9月10日までに、始末書を当委員会まで提出されたい。
株式会社中日ドラゴンズに対し、制裁金300万円を科する。

第2 事実と理由

1 本件の経緯

井端選手は2011年7月12日の対東京ヤクルト戦(神宮球場)において、他の3選手と共に検査対象選手となった。

試合終了後、4人の選手はNPB医事委員会の小松医師による検査に応じ、井端選手には中日球団から1名担当者が同席した。

4選手の検体は、手続にそって同年7月14日、財団法人日本アンチ・ドーピング機構公認検査機関である三菱化学メディエンス株式会社に持ち込まれた。 その結果、検体番号145776のA検体から、プレドニゾロン、プレドニゾン、20β-ジヒドロプレドニゾロンが検出された、との検査結果報告書が、同年7月27日付けで、NPB医事委員会に提出された。 検体番号を調べたところ、井端選手の検体であることが判明した。

検査結果はNPB医事委員会委員である下田邦夫NPBコミッショナー事務局長から、中日ドラゴンズ(以下、「中日球団」という。)の佐藤良平取締役球団代表に通知された。

同年8月3日、井端選手は佐藤球団代表同席のもと、調査裁定委員会による事情聴取に応じた。 調査裁定委員会の増島委員は、7月12日神宮球場で実施の検査における井端選手の検体から、プレドニゾロン、プレドニン、20β-ジヒドロプレドニゾロンが検出されたことを説明し、検査が正常に行われたことに関して井端選手に確認を求め、井端選手は検査は問題なく行われたことを認めた。

B検体の検査希望は井端選手からはなく、井端選手は以下の内容の説明を行った。

  1. (1)2年前の2009年4月21日にNPB医事委員会宛てTUEを提出しており、治療薬としてプレドニゾロンを申請し、それが有効であるという理解のもと、プレドニゾロンの内服を継続しており、今回のドーピング検査(7月12日)が実施される前、6月27日頃までプレドニゾロンを内服した。7月に入ってからは内服していなかった。そのため、検査時の申請でも、7日以内に服用したものとしては申告しなかった。
  2. (2)2009年以降、同薬品を使用していることは球団のトレーナーに報告していた。

井端選手の説明に対し、調査裁定委員会は、2009年4月22日のTUE申請に関し、4月23日付けのTUE判定書で承認された薬品の使用は認めるが、有効期限は5月30日までであり、その後使用する場合は改めてTUEを申請するように、との判定をしていたことを説明した。 井端選手はその判定書を見たことがないと述べた。

2011年8月4日、中日佐藤球団代表に対し、調査裁定委員会から今回のケースが陽性であることを認定したこと、10日以内に弁明の機会を与えること、中日球団の担当トレーナーの事情聴取を要請することを通知した。

同年8月12日、中日球団西脇取締役管理担当、藤田チーフトレーナー、寺西一軍総務の3名出席のもと事情聴取を行った。

球団側からは以下の内容の説明があった。

  1. (1)2009年に井端選手からTUEをNPB医事委員会宛てに送付していることは認識していたが、TUE判定書において、有効期限付きの承認を受けていた事は認識していなかった。行き違いでNPB医事委員会からの返答を確認できていなかった可能性がある。
  2. (2)2009年以降、数回選手側に使用している薬物の確認を行ったが、井端選手から対象となる薬の報告はなかった。

2011年8月18日、井端選手は中日球団西脇取締役と共に再度調査裁定委員会と面会、事情説明を行った。 井端選手からは、球団のトレーナーには使用している薬物は報告していた、との説明があった。

2「アンチ・ドーピング規則違反」の成立について

井端選手に対するドーピング検査は適正に行われ、その結果、NPBドーピング禁止規程(以下「NPB規程」という。)2条1項が参照する世界アンチ・ドーピング機構(以下「WADA」という。)の定めた「世界ドーピング防止規程」(以下「世界ドーピング防止規程」という。)2011年禁止表国際基準において「禁止物質」とされている「S9.糖質コルチコイド」に含まれるプレドニゾロン、プレドニン、20β-ジヒドロプレドニゾロン(以下「検出薬物」という。)が井端選手の尿検体から検出されたことは、前記1において認定したとおりであり、これらの事実については、井端選手も争っていない。 したがって、井端選手の「生体からの検体に、禁止物質、あるいはその代謝物又はマーカーが存在すること」は明らかであり、井端選手にNPB規程2条1項が参照する世界ドーピング防止規程2.1条所定の「ドーピング防止規則違反」が成立する(なお、今般の禁止物質の存在に関連し、治療目的使用に関する除外措置(Therapeutic Use Exemption)(以下「TUE」という。)の手続は採られていない。)。

3 処分の選択について

(1)事実関係について

本件に関係する資料によれば、次の事実が認められる。

  1. (ア)井端選手を診察した医師の2011年8月1日付け意見書によれば、 (1)同選手は、2009年よりある疾患(以下、単に「疾患」という。)に関し、同医師の管理のもとで、定期的な検査を受けるとともに、内服薬の服用をしており、状態が不安定なときは、プレドニン錠の内服をしていたこと、 (2)最近では、2011年5月16日にプレドニン錠の内服の指示を受け、同年6月27日に内服の中止をしたこと、 (3)内服中止後完全に成分が排出されるまでには約1か月が必要であることが認められる。 以上によれば、今回の検出薬物は、競技力の向上目的ではなく、治療目的により体内に摂取されたものであることが明確である。 したがって、TUEの申請が適切に行われていた場合、NPB医事委員会により当該物質の内服が承認されていた可能性は相当程度あったものと推認され(後記のとおり、2009年4月23日には、一昨年に承認された例もある。)、今回のアンチ・ドーピング規則違反は、一種の手続ミスといい得る面がある。
  2. (イ)井端選手は、本件検査の2年以上前である2009年4月22日に、疾患に関するプレドニゾロンの服用につき、中日球団を通じ、NPB医事委員会に対し、同年4月21日付け「NPB TUE申請書」をもって、TUEを申請した。 この申請に対し、NPB医事委員会は、「判定期日」を「2009年4月23日」、「承認失効期日」を「2009年5月30日」とし、「承認失効期限後に投与の場合は、TUEを再提出すること」を「特記事項」に加えた上で、4月23日付け「NPB医事委員会 TUE判定書」(以下、「2009年判定書」という。)をもって、上記申請を承認し、2009年判定書は、NPBから、中日球団に対し、同月23日に、ファクシミリ送信された。 2009年判定書は、現在中日球団に保管されておらず、中日球団が当時確認したかどうかも不明である。 中日球団のトレーナーは、TUE申請をすれば、アンチ・ドーピング規程違反について免責が得られるものと誤信していた。 また、井端選手は、2009年判定書を見たことはなく、上記のTUEの有効期間について、知る機会はなかった。
  3. (ウ)井端選手は、上記(イ)で述べたTUE申請により、疾患に関するプレドニゾロンの服用については、もはやTUE申請をしなくても、アンチ・ドーピング規程違反にならないと誤信していた。
  4. (エ)検出物質は、「禁止物質」に当たるものである一方で、禁止表における「特定物質」に当たるものでもあった

(2)井端選手について

  1. (ア)前記(1)に認定したところによれば、井端選手が今回アンチ・ドーピング規程違反になったのは、今回検出された禁止物質の服用についてTUE申請を怠ったことによるものであるが、同選手がTUE申請をしなかったのは、一昨年のTUE判定書の有効期限を知らなかったことに起因するものであり、同選手が有効期限を知らなかったのは、中日球団が、井端選手に2009年判定書を見る機会を与えなかったことによるものであることが認められ(なお、アンチ・ドーピングについての連絡は、原則として、すべてNPBと各球団との間で行われるのが実務である。)、井端選手が今般TUE申請を怠ったことについては、酌むべき事情があったものと認められる。
  2. (イ)他方、アンチ・ドーピング規程に違反しないことについては、個々の選手がその義務を負っているもの(いわゆる自己責任)であり、禁止物質を体内に摂取しないこと、また、摂取する場合はTUE申請を行うことも、個々の選手の責務である。 また、2009年のTUE申請についても、TUE申請をすれば必ず承認されるとは限らず、また、承認されてはじめて当該禁止物質の摂取が治療目的による使用としてアンチ・ドーピング規則違反から免責されるのであるから、2009年判定書の確認をしなかったこと、ひいては、今般検出された禁止物質の服用についてTUEを申請しなかったことについて、井端選手にまったく過失がなかったということもできず、プロ野球においては、アンチ・ドーピングに関するあらゆる連絡がNPBと球団間とで行われる実務であることを勘案しても、同選手について何らの処分も科さないというのは相当でない。
  3. (ウ)以上の諸事情を考慮し、当委員会は、井端選手に対し、譴責処分を科するのを相当と認め、NPB規程10条3項に基づき、同選手に譴責処分を科し、2011年9月10日までに、始末書の提出を命じ、将来の戒めとする。

(3)中日球団について

今回の井端選手のアンチ・ドーピング規程違反については、上記のとおり、球団が、 (1)TUE申請をすればTUE判定が得られなくてもその効果が生じるものと誤信していたこと、 (2)2009年判定書(特に、TUEの有効期限及び特記事項)の確認を怠ったこと、 (3)2009年判定書の内容を井端選手に伝えず、かつ、その写しを井端選手に交付しなかったこと等が深く関係しており、 球団に相応の過失があったものと認められる。 また、中日球団は、アンチ・ドーピング(TUEに関する手続の遂行を含む。)に関し、特に責任者を決めておらず、また、関係書類の保管にも不備があったものと認められる。

以上の諸事情を考慮し、当委員会は、中日球団に対し、金300万円の制裁金を科するのを相当と認め、NPB規程10条4項に基づき、同球団に金300万円の制裁金を科する。


よって、頭書に記載のとおり、裁決する。

以上