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【コラム】“背番号11対決”に貫録のピッチング 試合を作る投球にこだわる楽天・岸孝之

 「やっぱりあのユニフォームっていいなと思いました」

 柔らかな笑みを浮かべたのは楽天の岸孝之だった。6月30日の西武戦(メットライフ)。先発した岸の前に立ちはだかった強力打線の面々が身にまとっていたのは、かつて自身が在籍時に着用していた復刻ユニフォームだった。さらに相手先発は2年目の今井達也。岸が2016年オフ、FAで楽天移籍を決めた後、ドラフト1位で西武に入団。岸が着けていた背番号11を受け継いだ新鋭だ。

 3万2037人の大観衆が詰めかけた、かつての主戦場。西武ファンの歓声が響くなか、岸は伸びのあるストレートを軸に強力打線を抑え込んでいく。6回には二死一塁から、「西武はアイツが打つと勢いに乗るし、ランナーがいるときに回すとやっかい。ヒットを打たれて塁に出すと、後ろ(の打者)も怖いですからね」と警戒していた浅村栄斗に左前打を浴び、二死一、三塁のピンチを招いた。しかし、慌てない。四番の山川穂高に対してフルカウントから外角低めのスライダーで空振り三振。ポンッとグラブをたたき、意気揚々とベンチへ引き揚げていった。結局、7回を3安打、2四球、8奪三振、無失点の好投で8勝目をマーク。6回途中6失点だった今井に対し、「いいボールを投げていた。ケガをせずに、頑張ってもらいたい」とエールを送る余裕を見せた。

 今季は最高の準備でシーズンを迎えた。ルールの改正にともない、取り組んできたのは二段モーション。東北学院大の途中までは二段モーションだっただけに「タイミングが合いやすい」と原点回帰のフォーム変更が奏功し、シーズンに入って投球内容は抜群だ。7月2日現在で13試合に先発。全試合で6回以上を投げ、8勝1敗、防御率1.80と安定感のある投球を披露している。特に5月は、1対0での完封勝利(5月2日、日本ハム戦・札幌ドーム)を遂げるなど5試合に先発し3勝0敗、防御率1.35。自身3度目、楽天移籍後初の月間MVPを受賞し「取れたことに対してはすごくうれしいです」と笑顔を見せた。

 今季、チームは波に乗り切れていない。開幕から低迷し、その責任を取って梨田昌孝監督が6月16日に辞任。新しく指揮官となった平石洋介監督代行の下、再建を図っている。その中で自身がやるべきことは一つ。先発として、しっかりと試合を作ること、だ。「完投したい」と口にすることも増えた。完投数は年間自己最多が5、昨季も1だったが、今季はすでに3(完封1を含む)だ。

 「勢いのある相手でも先発が頑張れば試合は作れる。毎週1度の先発なのだから、完投を目指すのは当然です」

 自分自身をエースだと頑なに認めない。ただ、「いたら落ち着く。困っているときに勝つ。それが一番」とエース像を語るが、すでに岸がそういった存在であることに異論はないだろう。

【文責:週刊ベースボール】