【コラム】開幕直前!2024年パシフィック・リーグ展望
パ・リーグはオリックスが黄金時代を迎えている。昨年は86勝を積み上げ、リーグ3連覇。2位のロッテに15.5ゲームの大差をつけた。追いかける5球団がこの差を埋めるのは容易ではないが、意地がある。対抗馬は打線を強化したソフトバンクか。投打のバランスに優れたロッテ、投手力はリーグ屈指の西武、今江敏晃監督が就任した楽天はチーム改革を進めて優勝戦線に食らいついていきたい。2年連続最下位の日本ハムも戦力を見ると、他球団に見劣りするわけではない。勢いに乗れば「台風の目」になる可能性を秘めている。
オリックスは山本由伸、山﨑福也の両投手がチームを退団した。この2人で昨年積み上げた白星は計27勝。大きな痛手であることは間違いないが、宮城大弥、山下舜平大、田嶋大樹、カスティーヨ、エスピノーザ、東晃平、曽谷龍平と先発陣はハイレベルだ。山岡泰輔も控えており、戦力ダウンを感じさせない。打線は西川龍馬がFA移籍で加入したことが大きなプラスアルファ。西川、森友哉、頓宮裕真とコンタクト能力の高いクリーンアップが実現する。下位打線で杉本裕太郎が復活、セデーニョが好不調の波を小さくすれば得点力がさらに上がるだろう。リーグ4連覇を達成できるか。
ロッテは内野陣のシャッフルを敢行。中村奨吾が二塁から三塁、藤岡裕大が遊撃から二塁に回り、チーム内のレギュラー争いが熾烈になっている。DeNAで2度の本塁打王に輝いたソト、昨季本塁打王のポランコがポイントゲッターになるが、奮起が望まれるのが和製大砲・山口航輝だ。昨年の打率.235、14本塁打は能力の高さを考えれば物足りない。20本塁打以上がノルマになる。投手陣のキーマンは佐々木朗希だ。球界を代表する投手として能力は申し分ないが、故障などで規定投球回に到達したシーズンがない。1年間フル稼働し、投手タイトルを独占するような数字を残せば、V奪回が現実のものになる。
3年連続V逸のソフトバンクは王座復権へ、山川穂高、ウォーカーの両主砲を獲得。山川はオープン戦で打率.306、3本塁打、ウォーカーは12球団トップの5本塁打と順調な仕上がりを見せている。柳田悠岐、近藤健介、栗原陵矢を加えた強力打線はリーグ屈指の破壊力だ。投手陣はモイネロ、大津亮介が救援から先発に転向し、頭数はそろっている。昨年は規定投球回に到達した投手が1人もいなかっただけに、先発陣がきっちりゲームメイクできるかで救援陣の負担が変わってくる。オープン戦では制球難で伸び悩んでいた杉山一樹がセットアッパーで好投を続けていた。チームの救世主になれるか。
今江監督が就任した楽天は大きなテコ入れに踏み切った。長年抑えを務めていた松井裕樹がパドレスにFA移籍したため、先発の大黒柱だった則本昂大を守護神に抜擢。さらに、本職の二塁を長年守っていた浅村栄斗を三塁にコンバートした。投打の主力の配置転換はチームの抜本的改革へ、強い意志の表れだ。若手が台頭しなければ、球団創設史上初のリーグ優勝、日本一に輝いた13年以来11年ぶりの頂点にたどりつかない。早川隆久、荘司康誠、内星龍ら生え抜きの若手たちは2ケタ勝利がノルマとなる。もちろん、ベテランの力も必要だ。日米通算200勝にあと3勝に迫った田中将大の復活に期待したい。
西武はドラフト1位・武内夏暉が加入したことで、先発陣がさらに強力になった。髙橋光成、平良海馬、今井達也、松本航、與座海人とエース級の投手たちがズラリ。救援も山川のFA移籍に伴うトレードで甲斐野央を獲得した。セットアッパーだけでなく、抑えの適性がある。新天地で輝きを放てるか。打線でポイントになるのが、アギラー、コルデロの両助っ人。アギラーはパワーとミート能力を兼ね備えた右の強打者、コルデロは左の長距離砲で飛距離が並外れている。昨年はリーグワーストの435得点と貧打が下位低迷の要因になっただけに、得点力が上がれば十分に勝負できる。
2年連続最下位からの巻き返しを図る日本ハムは、FAで複数球団の争奪戦を制して山﨑福也の獲得に成功。さらにメジャー通算108本塁打のレイエス、3年ぶりに復帰のバーヘイゲンと投打の大物が次々に加入した。昨年、万波中正が大活躍したように成長著しい若手が多い。金村尚真、根本悠楓、田宮裕涼はネクストブレークの筆頭候補だろう。故障もありまだまだ能力を出し切っているとは言えない淺間大基、清宮幸太郎、五十幡亮汰は勝負のシーズンとなる。白星を重ねるには、攻守でプレーの精度を上げなければいけない。新庄剛志監督就任3年目で、思い描く野球を体現できるか。
【文責:週刊ベースボール】