【2024セ・リーグ回顧】巨人が4年ぶりリーグ優勝も、DeNAが3位から下克上で26年ぶりの日本一
巨人は阿部慎之助新監督が就任し、4年ぶりのリーグ制覇を飾った。2年連続Bクラスから頂点に立った手腕は高く評価されるべきだろう。春先は打線がつながらなかったが、岡本和真を一塁、三塁、左翼と3つのポジションで起用し、本職が捕手の大城卓三を「五番・一塁」で固定して得点力を上げるなど用兵術が光った。途中加入のヘルナンデス、モンテスの貢献度も高い。不安定だった救援陣の再建にも着手。阪神から加入したケラー、新人王に輝いた船迫大雅、バルドナード、高梨雄平ら多士済々のセットアッパーから守護神・大勢につなぐ勝利の方程式を確立し、7月以降は安定した試合運びで白星を重ねた。先発陣は戸郷翔征、山﨑伊織、井上温大の奮闘が光ったが、最も大きなプラスアルファは菅野智之の復活だった。阿部監督の計らいで小林誠司と全試合バッテリーを組み、15勝3敗、防御率1.67で自身4度目の最多勝を獲得。クライマックスシリーズ(CS)はファイナルステージでDeNAに敗れ、来季は2年連続リーグ制覇、13年ぶりの日本一を目指す。
リーグ連覇を目指した阪神は9月以降に猛追したが、あと一歩届かなかった。投打で脂の乗り切った選手が多く、戦前の下馬評は優勝の大本命に推す声が多かったが、クリーンアップを担う佐藤輝明、大山悠輔、森下翔太が打撃不振でファームに降格する誤算で白星をなかなか積み重ねられない。投手陣は才木浩人が自己最多の13勝、大竹耕太郎が2年連続2ケタ勝利の11勝をマークしたが、昨年に大ブレークした村上頌樹が7勝11敗、伊藤将司が4勝5敗と白星を伸ばせなかった。救援陣は桐敷拓馬が70試合登板で43ホールドポイントをマークし、自身初の最優秀中継ぎ投手賞に。石井大智、ゲラ、岩崎優、富田蓮も奮闘した。オフに岡田彰布監督が退任し、藤川球児新監督が就任。FA権を行使した大山が残留を決断したのは朗報だ。戦力は整っており、十分に覇権奪回を狙える。
DeNAは投手陣の安定感で巨人、阪神に見劣りし、優勝争いに絡めず3位に。シーズン終盤に広島を逆転してCS進出すると、下克上で日本一に上り詰めた。リーグトップの522得点と打線の破壊力は12球団屈指だ。オースティンが打率.316、25本塁打、69打点で自身初の首位打者を獲得。牧秀悟、宮﨑敏郎、佐野恵太に加えてシーズン途中に復帰した筒香嘉智と強打者がズラリ。山本祐大が正捕手に成長し、梶原昂希、森敬斗、蝦名達夫、度会隆輝と楽しみな若手が多い。CSで戸柱恭孝、ソフトバンクを4勝2敗で撃破した日本シリーズでは桑原将志がMVPに輝くなど選手層が厚い。リーグ制覇を狙う来季は13勝をマークした東克樹、ジャクソン、ケイに続く4番手以降の投手を確立できるか。救援陣も長丁場のシーズンを乗り切る陣容をそろえられるかがカギを握る。
広島は8月まで優勝争いに絡んでいたが、9月以降に7勝22敗と大失速。9月突入時に首位だったチームがBクラスに転落したのは史上初だった。夏場以降に投手陣が痛打を浴びる場面が目立ったが、最大の課題は打線強化だろう。415得点はリーグ5位。52本塁打はリーグワーストで、2ケタ本塁打は12本を放った坂倉将吾のみと迫力不足が否めない。秋山翔吾、野間峻祥、小園海斗とチャンスメークする選手はそろっているだけに、クリーンアップを固定できれば戦い方がガラリと変わる。今季79試合出場で打率.238、9本塁打と故障に泣かされた末包昇大、若手成長株の田村俊介が一本立ちできるか。明るい材料は、遊撃に抜擢した矢野雅哉の台頭だ。広い守備範囲と強肩を武器にゴールデン・グラブ賞を受賞。打撃でもリーグトップの6本の三塁打を放つなど成長の跡を見せた。
2021、22年とリーグ連覇を飾ったヤクルトだが、2年連続5位と低迷。リーグワーストのチーム防御率3.64と投手陣が不安定なため、試合の主導権を握られる展開が目立った。打線はリーグ2位の506得点をマーク。村上宗隆が33本塁打、86打点で2冠王に輝き、サンタナがシーズン最終盤まで首位打者争いを繰り広げて最高出塁率(.399)、長岡秀樹が最多安打(163本)のタイトルを獲得したが、山田哲人が故障で2度離脱し、リードオフマンの塩見泰隆が左膝前十字靭帯損傷、半月板損傷の大ケガで31試合出場のみに終わったのが痛手だった。ヤクルトが頂点に立つときは、強力打線と安定感抜群の救援陣が象徴となるケースが多いが、先発陣のコマ不足も解消したい。吉村貢司郎、高橋奎二、小川泰弘は2ケタ勝利で貯金を作るのがノルマだ。
球団史上初の3年連続最下位に沈んだ中日は、立浪和義監督が今季限りで退任。井上一樹新監督が就任してチーム再建を目指す。低迷期が続いているが、戦力面で他球団に大きく見劣りしているわけではない。球界を代表するエースに成長した髙橋宏斗、最優秀中継ぎ投手賞に輝いた松山晋也、侍ジャパンの一員としてプレミア12に出場した清水達也を擁し、打線もリーグワーストの373得点に終わったが、細川成也、岡林勇希、福永裕基、石川昂弥、村松開人、田中幹也とチームの核になる選手が育っている。ドラフトでは大学No.1左腕・金丸夢斗、社会人屈指の左腕・吉田聖弥と先発で即戦力コンビの指名に成功した。楽しみな若手が多いが、中堅、ベテランの活躍も上位浮上に不可欠だ。チームを支えてきた柳裕也、大野雄大、木下拓哉、高橋周平は意地を見せられるか。
【文責:週刊ベースボール】