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【コラム】物事の本質を見極めたい性格で投球も進化、プロ初完封を遂げた日本ハム・北山亘基

 最後まで球威は衰えなかった。4月20日のロッテ戦(エスコンF)。先発の北山亘基が9回二死から代打で登場した角中勝也をカウント1-2と追い込んだ。渾身の力を込めて投じた4球目の直球は152キロに達し、角中のバットは空を切った。116球の力投でプロ初完封勝利。「僕の下の名前は『こうき』って言うんですけど、今日は勝てて『さいこうき』でーす」とお立ち台で喜びをあらわにした北山は、さらにファンに感謝の思いを述べた。

「8回、9回とマウンドに上がる際にファンの方からの拍手や声援が聞こえてきたので勇気をもらいました。9回のマウンドに上がる際は登場曲も流れたので、『やってやるぞ!』という気持ちになって投げることができました。ファイターズは優勝を目指しています。もっともっと勝って、首位に立ちたいので引き続き応援のほどよろしくお願いします」

 2022年に京産大からドラフト8位で日本ハムに入団した右腕は加速度的に進化している。1年目は開幕投手に抜擢され、その後は守護神、セットアッパーを任されてチーム最多の55試合に登板。昨年は主に先発で14試合登板し、6勝5敗、防御率3.41の成績を残した。さらに飽くなき向上心で高みを目指す。昨季までの課題の1つである制球を安定させるために、オフから新フォームを模索した。「自分の軸をしっかり保った中で、投げたい方向にしっかり重心移動するところが1つの大事な部分」。上げていた左足を、すり足に近い動きに変更。フォームの始動から一気に前方へ体重移動する形となった。

 一見すると山本由伸(ドジャース)を彷彿とさせるフォームだが、決してマネしているわけではない。「自主トレ先で、お世話になっている先生が(山本由伸と)一緒なので取り組みやトレーニングの内容から(フォームが)似てくる部分はあると思いますけど、僕自身は僕自身。自分のものにできるように」と真意を明かしていた。あらゆる角度から投球のメカニック、自分に合う体の使い方、メンタルなどを勉強し、理想の投球をするために必要なものだけを注ぎ込んだ新フォームが成長につながっている。4月22日現在、3試合に先発して2勝0敗、防御率1.71をマーク。27奪三振はリーグ3位だが、奪三振率11.57は規定投球回に到達している投手の中ではトップの数字だ。

 愛称は「教授」。アマチュア時代からトレーニングやコンディショニングの知識を学び、さまざまな取り組みを敢行してきたが、「考える力」が北山にとって大きな武器なのは間違いない。野球に関して研究する姿勢について聞かれると以下のように答えたことがある。

「もともとの性格なんでしょうが、小さいころから物事の本質を見極めたいというか、そういう気持ちはありました。表面的な部分だけを見ないような考えがあったんです。例えば、野球に関しても『その日が良かったからOK』じゃなくて、『なんで良かったのか?』と考えてみたり。何事にも原因があって、結果があるものですから。それをしっかりと把握しないと気持ちが悪いんです」

 2年連続最下位からの逆襲を目論む日本ハムだが、若手が徐々に力をつけ、今年は大きくジャンプアップする予感が漂う。その中心に背番号57がいるのは間違いない。

【文責:週刊ベースボール】