【コラム】「最後の最後まであきらめたくない」大きな夢を秘める先発初勝利を飾った楽天・内星龍
「神様、打ってください」と祈るような思いで先輩の打席を見守った。4月27日のロッテ戦(ZOZOマリン)。楽天先発の内星龍は3回に1点を許したが、追加点は与えない。最速152キロの直球を軸にスライダー、カーブ、スプリットを巧みに散りばめるピッチング。7回を99球1失点で投げ抜くと、8回表に味方打線が奮起。浅村栄斗が同点打を放つと、さらに一死二、三塁で打席には島内宏明が入った。四番が澤村拓一のスプリットをとらえた打球は右翼フェンス直撃の勝ち越し2点適時三塁打に。楽天打線はさらに1点を追加し、一挙4得点で内に勝利が転がり込んできた。今季4試合の先発登板で記念すべき先発初勝利だった。
プロ3年目の昨季に一軍デビューを飾った内。190センチの長身から投げ下ろすキレのある直球と強気のピッチングでリリーフとして53試合に登板した。だが昨オフ、絶対的守護神・松井裕樹のメジャー挑戦にともない、エース・則本昂大がクローザーに転向。則本が稼いできたイニング数、勝利数を新しい先発でカバーする必要が生じ、その一人に選ばれたのが内だった。
「新聞記事などでは先発転向は僕が直訴した感じになっているのですが、今江(敏晃)監督から、シーズン後に『来年は先発をしてほしい』という話を受けたんです。秋季キャンプが始まるまでに考えておいてほしいとのことだったので、トレーナーさんなどと話し合いながら決めました。プロの世界に入って最終的な目標として絶対に先発をしたいという思いがあったのでチャンスが早く来たな、と。させていただけるなら頑張ってみようかなと思い決断しました」
先発転向にあたって、しっかりビジョンを描いた。
「昨年は中継ぎで多くのマウンドに上がらせていただき、緊張の部分、メンタル面ではすごく勉強になったと思います。ただ技術の面では球数やテンポであったり、いろいろなことが変わってくる。球種も増やしていく必要がありますし、状況判断も、絶対に1点をやれない場面なのかここはアウトを取ることを優先する場面なのか、中継ぎとはケースが変わってくるところが多過ぎるな、と。そういった部分では去年のことを生かすよりは、今年は挑戦者の気持ちでやっていこうと思います」
先発初勝利で本格的に先発としての一歩を踏み出した内。視線の先には大きな目標もある。「いずれはメジャー・リーグでやっていける選手になりたいです」。その思いの根底には内の信念がある。
「やっぱり夢は大きくないと絶対ダメだと思っているので、今はまだ言えませんが抱いている大きな目標もあります。そして、そこに到達する最後の最後まであきらめたくない。何が起こるかは分からないですから。僕自身も高校2年からピッチャーを始めて、でも全然ダメで、高校3年のときにはコロナで甲子園がなくなって。もうダメかなって思ったときにプロ志望高校生合同練習会があった。本当に何があるかは分からないので、あきらめなかったら終わらないんじゃないかなと思います。だからこそ何歳になってもその目標は追い続けたい。40歳くらいになったとしてもアメリカには行きたいと思っています」
22歳右腕の可能性は無限大だ。
【文責:週刊ベースボール】