【コラム】指揮官も大絶賛の投球でソフトバンク打線を8回ゼロ封、「結果より気持ち」を大事にマウンドに立つ西武新人・武内夏暉
背番号21の集中力が一段と高まった。5月3日のソフトバンク戦(ベルーナドーム)。0対0で迎えた6回表、二死三塁のピンチで三番・柳田悠岐を打席に迎えると西武先発・武内夏暉のギアが上がった。カウント1-2からスライダー、直球が外れフルカウントになると7球目に選択したのはカーブ。ブレーキの利いた変化を見せた1球が外角に決まると、柳田のバットは空を切った。その瞬間、武内は小さくガッツポーズ。球場は西武ファンの大歓声に包まれた。
その裏、味方打線は一死満塁から中村剛也の三ゴロの間に1点を先制。武内には、それだけで十分だった。7、8回もソフトバンク打線をゼロに封じ、8回4安打8奪三振無失点。堂々たるピッチングで2勝目を手にした。「とにかくチームの勝利に貢献したいと思っていたので、そのとおりになってうれしいです」と笑顔を浮かべた武内。松井稼頭央監督は「見事ですね。本当に物怖じしないというか、堂々と相手を攻めていってくれました。マウンド度胸と言いますか、素晴らしいですね」と大絶賛した。
昨秋のドラフトで3球団が競合した黄金左腕。5月6日現在、4試合に先発して2勝0敗、防御率1.55と高い評価に違わぬピッチングを見せている。「本当に良い方向に行っていると思っています。変化球も、特にカーブ、スライダー、カットボールなどの曲がり球系の感覚が変わってきたりして、さらに良い感覚で投げられるようになっています」と本人も手ごたえ十分だ。
髙橋光成、今井達也、平良海馬、隅田知一郎らレベルの高い先発陣からも好影響を受けている。
「皆さん、落ち着いています。一人ひとり、本当にそれぞれがどっしりしているというのは感じますし、やるときとやらないとき、つまりオンとオフの切り替えがすごく上手だな、と。そういったところは『先輩投手らしいな』と感じますし、自分も見習いたい。僕もいずれはフィジカル面、トレーニング面、テクニカル面、栄養面など、すべてに対して自分が意図を持って環境を整えて、それをしっかり取り組んでいけば、もう一段階レベルアップできると思います」
仲間の思いにも後押しされてマウンドに上がる。登場曲に選んだのはケツメイシの『仲間』だ。
「福岡に帰省したときに高校の同級生たちとカラオケに行くのですが、みんな両手を上げて大合唱するぐらい、その曲が好きなんです。一番好きなフレーズは『結果より気持ちだろ』という部分ですね。あまり結果を求め過ぎても……というところが、すごくピッチャーらしいという感じがしますよね(笑)。それに、地元でみんなで歌うとき、なぜかみんなそこだけ強く歌うんですよ! それぐらい、そのフレーズが大好きなので、自然と頭の中に残っていますね」
これからもマウンドで動じることなく、勝利のために左腕を振っていく。
【文責:週刊ベースボール】