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【コラム】主武器は「誰もが投げられない」カットボール、広島・大瀬良大地がマツダスタジアムで初のノーヒットノーラン

 ポランコの放った打球が右翼手のグラブに収まった瞬間、マウンド上の広島・大瀬良大地は捕手・會澤翼に後ろから抱き抱えられながら両手を高く突き上げた。6月7日のロッテ戦(マツダスタジアム)。先発した大瀬良は相手打線を封じ込んでノーヒットノーランを達成した。球団としてのノーヒットノーラン達成者は2012年4月6日のDeNA戦(横浜)の前田健太(現デトロイト・タイガース)以来、史上5人目だ。本拠地に限ると、1999年5月8日の中日戦で成し遂げた佐々岡真司以来、25年ぶり。しかし、これは旧広島市民球場時代の出来事であるため、2009年に開場したマツダスタジアムでは初の快挙となった。

 2018年には最多勝利と勝率第一位に輝いた右腕だが、ここ数年はたび重なるケガに苦しみ、満足なシーズンを過ごすことができなかった。昨オフは自身3度目となる右肘手術に踏み切り、以降は地味なリハビリに励んだ。「いろんな方の支えのおかげでマウンドに立てている。支えてくれた人たちが喜んでくれていると思うと、とてもうれしい。最近は若いアマチュアの選手で、よく手術する子が増えているという現実を聞くので、こういう人間もいるという姿をこれからも見せていければいい」と思いを語った。

 ノーヒットノーラン達成も決して快刀乱麻のピッチングではなかった。試合序盤から打たせて取る投球が続いた。奪った三振は2個のみ。2回、6回、8回、9回にいずれも四球で出塁を許したが、「低めの良いところにボールが集まった」と最速148キロの真っすぐ、スライダー、カットボール、フォーク、シュートを低めに丁寧に配して、ゴロアウトは10(併殺打1を含む)、フライアウトは14を数えた。多彩な球種を誇るが、中でも大瀬良の伝家の宝刀と言えばカットボールになるだろう。この試合でも49球と最も多く投げ込んだ。ストレートより投球割合は高く、シーズン通算でも被打率.133と打者を牛耳っている。

「よく『ひねったりしないんですか?』と聞かれるんですが、真っすぐと一緒、ひねらない。140キロ台後半(の球速)で少しだけ曲げるときなんかは、自分としては“真っすぐを投げているのと一緒”ぐらいの感覚で投げています。そして、角度が大きければ大きいほど、スピードが落ちて、曲がり幅が大きくなり、三振を取りにいくボールにもなります」

 よく投げ方を聞かれて教えるが、誰もが「投げられない」と白旗をあげるという。

「僕の場合は、手首の角度や、リリースするときの力の掛け具合とかで、横に曲げたり、タテ気味に曲げたり。曲がり幅を小さくしたり、大きくしたりもします。そして、ほかの選手との違いというところでは、回転数。トラックマンやホークアイの数値を見てみると、ほかのピッチャーの同じ球速帯のカットボールと比べてみても、回転数が多くて、曲がり幅が大きいんです。だから、空振りが取りやすい。そういう意味でも、少し特殊なボールになっています。ちなみに、何で回転数が多いのかは、僕自身もよく分かっていません(笑)」

 簡単にマネできないからこそ、大瀬良にとって大きな武器になっているのは間違いない。

 大記録を達成したが、ベテラン右腕は冷静だ。「達成感に浸れるのは、今シーズンをしっかり終えてから。なによりもチームが勝てたことが一番。次の試合が大事になってくる」と早くも先を見据えた。あくまで目指すのは6年ぶりのV。完全復活を印象付けた背番号14のエースがチームのために全力で腕を振り続ける。

【文責:週刊ベースボール】