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【コラム】『人間万事塞翁が馬』ということわざを胸に、楽天初の交流戦優勝に貢献した左腕・藤井聖

「今年で球団創設20周年ですか。そういう年に交流戦初優勝。こうやって歴史に名を残せたことが非常にうれしく思います」と楽天・今江敏晃監督は喜びをかみ締めた。6月16日の広島戦(楽天モバイル)に5対3で勝利。前日まで同率首位で並んでいたソフトバンクが阪神に敗れたため、交流戦優勝が確定した。優勝の要因を「とにかく全員が一生懸命、自分の役割を果たしてくれたのが一番」と指揮官は分析したが、交流戦Vは投手陣の復調がもたらしたとも言える。交流戦のチーム防御率は2.29。投手が踏ん張り、チームに勝利を呼び寄せた。

 中でも藤井聖が交流戦1位タイの3勝を挙げるなど先発陣をけん引した。3勝目を挙げた6月13日の巨人戦(楽天モバイル)は5回3安打無失点。初回以外、すべての回で走者を背負ったが、3度の併殺打を打たせて得点を許さない粘りのピッチング。2日前まで39度2分の高熱があり、平熱に戻りマウンドに上がったが、その影響か手のしびれも感じながらのピッチングだった。「気合と根性で投げました」。ずっと好きだった巨人を倒して勝利を手に入れ、感慨深い表情も浮かべていた。

 今年で4年目の左腕。東洋大時代の同期には上茶谷大河(DeNA)、梅津晃大(中日)、甲斐野央(西武)、中川圭太(オリックス)、末包昇大(広島)がおり、藤井と末包以外は大学からプロ入り。その後、2人は社会人を経てプロへと進んだが、楽天でも藤井と同期入団の早川隆久が1年目から活躍するなど焦りや悔しさを何度も経験してきた。しかし、そんなときに常に心にとめていたのが『人間万事塞翁が馬』ということわざだった。

「いいときもあれば、悪いときもあるという意味で、『悪いことがあったあとは絶対にいいことがある』という思いでいつもいます。僕はずっと大器晩成型だと思っているんです。高校も大学も最後のほうに良くなったので。そういった経験から『そのうち良くなるでしょ』と楽に考えていたところはありますね。しっかり耐えて頑張っていれば、必ずいいほうに結びつくという気持ちでずっとやっています」

 ストレートの平均球速は約141キロ。変化球はスライダー、シンカー、チェンジアップ、カーブ、ツーシームと多彩だ。球速が遅い分、変化球をうまく使ってストレートを速く見せ、すべての球種を丁寧に低めに集め、打者を打ち取っていくピッチングが真骨頂だ。今季は開幕先発ローテーション入りこそ逃したが、シーズン序盤に先発登板のチャンスを得ると安定感のあるマウンドさばきで試合をつくり続けた。4月21日の西武戦(ベルーナドーム)で今季初勝利を挙げると、6月6月の阪神戦(甲子園)で自己最多の4勝目をマークするなど5連勝を記録している。

 楽天は借金8を交流戦で完済。6月21日からパ・リーグ球団との戦いが再開するが、4位からの浮上へ最高の状態でペナントレースへ入っていける。だが、藤井に気負いはない。

「もちろん、2ケタ勝利を挙げられるのがベストですが、数字として掲げているものはないんです。とにかく1勝でも多くという思いが常にあります。先発ローテに食らいついて、1勝でも1試合でも多く投げることが今の目標です」

 今後も地に足を着けて地道にプロ野球人生を歩んでいく。

【文責:週刊ベースボール】