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【コラム】「意識して」“マダックス”を達成した中日・髙橋宏斗、グラウンド外の生活も見直して復調した投球

「8、9回は意識していました」と中日・髙橋宏斗は舞台裏を明かした。7月5日の広島戦(バンテリンドーム)、背番号19は快投を見せる。7回まで3安打無失点と最速156キロの直球、キレ味鋭いスプリットを軸に広島打線を圧倒したが、球数はわずか74。7回を投げ終えてベンチに引き揚げると大塚晶文投手コーチから「おまえ、“マダックス”は意識していないよな」と声を掛けられて初めて気がついた。100球未満の完封勝利――“マダックス”の可能性がある、と。

 8回は11球で三者凡退に仕留めて85球で9回へ。先頭の秋山翔吾には8球を擁したが空振り三振、続く矢野雅哉は3球三振に斬って取った。“マダックス”まで残り3球。小園海斗には2球で追い込んで運命の99球目。外角低めの絶妙なゾーンにスプリットを落とすと、バットを出した小園は二ゴロに。ギリギリで“マダックス”を達成。中日の投手が記録したのは2016年4月6日DeNA戦(ナゴヤドーム)の小熊凌祐以来だった。

「かなりいい感じで投げられていました。球数を抑えながら、テンポよく投げられているのは成長していると思います。ファンの歓声はすごく背中を押してくれました。開幕から悔しい思いをしましたが、ようやくここまで戻ってこられました」

 高卒3年目の昨年に最年少で侍ジャパン入り。WBC決勝・アメリカ戦では5回から救援登板し、マイク・トラウトとポール・ゴールドシュミットを連続三振に仕留めるなど1回無失点に抑え、世界一に貢献。シーズンでは25試合登板で7勝11敗、防御率2.53に終わったが、今季は新エースとして期待されて開幕投手候補に名乗りを上げた。しかし、春季キャンプでつまずいた。投球フォームで試行錯誤して状態が上がらない。開幕を二軍で迎えることになり、悔しさを抱えてグラウンド外の生活から見直した。

「今年は開幕二軍のスタート。決まったときは、すごくショックでした。でも真っすぐも良くなかったですし、パフォーマンスが悪かったのは分かっていたので受け止めました。それから1カ月ほど、外食をやめました。今年からひとり暮らしをしているんですよね。ドジャースへ移籍された山本由伸さんの食事をオリックス時代に担当されていた栄養士の方のアドバイスを受けて、食べるものを決めているんです。自宅にカットしている食材が届くようになっています。煮たり、炒めたり。料理とは言わないかもしれないですけど体を考えた食事をしています」

 4月28日に一軍昇格すると、抜群の安定感を見せた。昨年はリーグワーストの8暴投、51与四球。「真っすぐがもっと走れば、投球テンポも良くなって、キャッチャーも捕りやすくなると思います。僕のリズムが悪くて、捕球しづらい部分もあったと思います」と反省していたが、今年は改善。7月8日現在、暴投は3で与四球率も昨年の3.14から1.93と良化している。

 10試合に先発して5勝1敗、防御率0.64。規定投球回に9イニング足らず、防御率ランキングには入っていないが、このまま好投を続ければ1位で顔を出す可能性も十分にある。球界のエースになる資質を備える右腕から目を離すことができない。

【文責:週刊ベースボール】