【コラム】途切れないソフトバンク・柳町達の集中力、パワーアップしたスイングで2試合連続弾
「甘い球を引っ張ってしっかりとらえられるのは、彼の成長を感じますね」とソフトバンク・小久保裕紀監督は目じりを下げた。8月16日のロッテ戦(みずほPayPay)。左臀部を痛めた栗原陵矢に代わって2試合連続三番でスタメン出場した柳町達がバッティングで魅せた。初回、一死二塁で打席に入ると石川歩の外角低め直球をジャストミート。「得点圏にいる(周東)佑京さんをホームにかえそうと集中していました」。右中間テラス席に飛び込む本拠地初ホームランが決勝2ランとなった。
「長打が欲しいという中で取り組んできていることが形になってきている」と指揮官は称賛したが、前日の西武戦(ベルーナドーム)でも3回に2ランをバックスクリーン右に運んで勝利に貢献している。2022、23年と2年連続100試合以上の出場を果たしながら本塁打ゼロに終わった柳町。「打てなかったのはちょっと……残念でしたね。狙った打席とかもあったりはしたんです。でも、そういうときはファウルが多かったり、仕留め切れないということがちょっと多くて」と悔しさをあらわにしていたが、今年はすでに4本塁打をマーク。8月19日現在、長打率も.475と昨年の.322から上昇し、OPSも.818と高水準を示している。
22年シーズン後から体力面を強化すべく、体幹を意識したトレーニングや体の使い方に気を配ってきた。さらに「体が大きくなれば、スイングスピードも上がってくると思います。やっぱり、体を大きくするというところが、まずこのオフの課題の一つですかね。筋量を増やせば勝手に体重も増えるので、筋量で1.5から2キロぐらい増えたら、また違ってくる。同じスイングでも、だいぶ変わってくると思いますし、そうなるとホームランにも近づいてくるのかなと思います」と昨シーズン終了後に語っていたが、その取り組みが実を結び始めているのは間違いない。
さらに精神面の成長も感じていた。「自分なりに確かなものとして残すことができたのは『集中力』です。あらためて、メンタル面の重要性を感じましたし、打席での集中力はかなり磨かれたところがありました。打線の中軸を打つことでチャンスの場面も多くありましたし、代打の経験も。その中で、集中力を発揮することができた場面が、本当に多くありました。緊張感の高まった極限の場面でも自分の力を出すためには、やっぱり雑念があったらいけないんですよね。やってきたことを出すためには、集中力が必要。この経験は、来季以降にも絶対に生きてくると思います」と手応えを口にしていた。
それが今年生きた。開幕二軍スタートだったが、集中力は切らさない。ウエスタンで一時は打率4割超をマーク。チーム状態が良く、なかなか一軍から声がかからなかったが、気持ちが切れることはなかった。5月28日、満を持して一軍昇格。同日の巨人戦(東京ドーム)、7回に代打で打席に入るとフルカウントから船迫大雅の外角直球を左前へ運んだ。「本当に集中して打席に入った」。その後、スタメンの座をつかむと快打を連発。ここまで打率.310をマークして打線の中で欠かせない存在となっている。
「まだ優勝が決まったわけではない。気を抜かずに一戦一戦を必死になって頑張っていきたいと思います」
目の前の打席に集中する若鷹が4年ぶりの優勝へチームを加速させていく。
【文責:週刊ベースボール】