【コラム】エース左腕も感謝する主砲のバッティング、“横浜愛”にあふれるDeNA・オースティン
チームメートからの信頼感は抜群だ。9月3日の広島戦(横浜)、初回二死二塁で打席に入ったDeNAの四番・オースティン。「コンパクトなスイングで何とか事を起こそうと思った」の言葉どおり、カウント1-1から森下暢仁が投じた内角低め148キロ直球を振り抜くと打球は鮮やかに左前へ。先発・東克樹に先制点をプレゼントすると、4回には先頭で左翼フェンス直撃の二塁打。この回、一挙3得点を呼び込む一打を放った。DeNAは5対1で勝利。7回2/3を1失点の東は12勝目を挙げたが、「毎試合、僕が投げるときにRBI(打点)してくれるのでTA(オースティン)のおかげです。ありがとうございます」と主砲に感謝した。
勢いに乗ったDeNAは4、5日も勝利し、広島を3タテ。6連勝で4位ながら首位・巨人に4.5ゲーム差に詰め寄った。7日の巨人戦(東京ドーム)に敗れ、連勝は止まったが、翌8日の同カードでは8対0と大勝。オースティンは初回一死一、二塁で左越えの先制適時二塁打を放つなど、猛打賞2打点と力強く打線をけん引した。シーズン最終盤で上位をうかがうDeNAにとって、オースティンのバットは頼もしい限りだ。
2020年に来日したオースティン。同年は度重なる故障で65試合の出場に終わったが打率.286、20本塁打、56打点をマーク。シーズンをフルに出たら40本塁打を軽々と超えるペースだった。その後も故障に悩まされ、規定打席に到達したシーズンは1度もなし。昨年も交流戦のヘッドスライディングで負傷交代。「右肩鎖関節のねんざ」の診断を受けて戦線離脱すると、9月下旬にアメリカの病院で右鎖骨遠位端切除術を行った。22試合出場で打率.277、0本塁打、6打点。悔しいシーズンとなってしまった。
今季も開幕直後、試合中に右太もも裏の肉離れを起こし、一時離脱していた時期もあった。しかし、5月中旬に一軍復帰すると9月9日現在、85試合に出場し、打率.316、22本塁打、59打点をマーク。規定打席未満ながら、本塁打、打点のタイトルを狙える位置につけている。ただ、本人は「個人成績はあまり気にしていない」という。何よりも欲しているのはチームの勝利だ。
「本当に小さいころから周りの人に勝利の大切さを教わってきました。リトルリーグや中学、高校での選抜チーム、マイナー・リーグ、そしてメジャーに上がってからも、です。どのコーチにも勝利については口酸っぱく言われてきました。それが今の私のプレースタイルにつながっているんです」
日本での生活も5シーズン目になるが、本拠地である“横浜愛”にもあふれている。
「野球をする上でも、生活する上でも、横浜は本当に美しい街だと感じています。人も優しい。それに満員になっている横浜スタジアムのスタンドを見ると、選手としてありがたいと感じますし、自分自身も勇気をもらいます。特に打席に向かうときに一番ファンの方の声が聞こえて後押ししてくれています」
上り調子でシーズンを完走することを誓うオースティン。2024年シーズン、DeNAにどのような結果が待ち受けているのか。主砲のバットに、その答えがあるのかもしれない。
【文責:週刊ベースボール】