【セCSファーストS展望】リーグ連覇叶わず2位から下克上狙う阪神、DeNAは投手陣の踏ん張りがカギに
10月12日に甲子園で開幕する「2024 JERA クライマックスシリーズ セ」のファーストステージ。球団史上初のリーグ連覇を狙った阪神は巨人と熾烈な首位争いを繰り広げたがあと一歩及ばず、2位に。本拠地・甲子園で再スタートを切り、2年連続日本シリーズ進出を目指す。
昨年は夏場以降に首位を独走してリーグ優勝を飾った。日本シリーズでもオリックスを4勝3敗で撃破し、38年ぶりの日本一に。投打で脂が乗り切った選手たちがそろい、今季も優勝候補の大本命と目されていたが、想定外の誤算が続いた。
3、4月は15勝9敗3分と好スタートを切ったが、その後は貧打に苦しむ。攻守で精彩を欠いた佐藤輝明が5月15日に登録抹消されると、昨年全試合に四番でスタメン出場した大山悠輔が打率1割台と状態が上がらず、6月5日にファーム調整へ。森下翔太も打撃で試行錯誤を繰り返し、7月6日にファーム降格した。クリーンアップがそろって打撃不振という緊急事態に、岡田彰布監督はリードオフマンの近本光司を四番に据えた時期も。5、6月の計46試合で115得点、1試合平均2.5得点では苦しい。6月終了時点で勝率5割に逆戻りした。夏場以降に佐藤輝、大山、森下のバットが振れてくると、9月に入って2度の5連勝を飾り、首位・巨人に1ゲーム差まで接近したが、残り6試合で失速した。
シーズン終盤に地力を見せたように、チーム状況は上向いている。大山、森下、佐藤輝、近本がシーズン得点圏打率3割以上をマーク。成長著しい前川右京、パンチ力が魅力の井上広大に加え、下位打線のキーマンが木浪聖也だ。昨季はCSファイナルステージの巨人戦で3戦計10打数5安打1打点と大活躍し、MVPを獲得。今年も「恐怖の八番打者」の打棒爆発に期待したい。
CSファーストステージは第1戦が才木浩人、第2戦は髙橋遥人の先発が予想される。才木は今季13勝3敗、防御率1.83と自己最高の成績をマーク。髙橋はシーズン途中に度重なる故障から復帰し、4勝1敗、防御率1.52。能力の高さは球界屈指で知られる左腕の完全復活は近い。救援陣は桐敷拓馬、石井大智、富田蓮、岩崎優、ゲラと安定しており、先手を取って試合を有利に運びたい。
3位で3年連続CSに進出を決めたDeNAはリーグトップの522得点をマーク。101本塁打はリーグ2位だが、69盗塁はリーグトップだった。打率.316で来日初の首位打者を獲得したオースティン、入団以来4年連続20本塁打をクリアした牧秀悟、長打力と確実性を併せ持つ宮﨑敏郎、佐野恵太が中軸に並ぶ打線は破壊力十分。アメリカから5年ぶりに日本球界復帰した筒香嘉智も頼もしい存在だ。正捕手の座を確立した山本祐大は打撃でも貢献度が高く、打率.291、5本塁打、37打点をマーク。9月中旬に右尺骨骨折で戦線離脱し、規定打席到達はならなかったが、攻守の核となった。焦りは禁物だが、チームが日本シリーズに進出すれば戦列に復帰できる可能性がある。
リードオフマンの育成が懸案事項だったが、今年はプロ3年目の梶原昂希が台頭。打率.292、4本塁打、30打点、16盗塁をマークした。開幕戦でアーチを放ち、2戦目も2試合連続アーチを含む4安打と鮮烈な活躍でスタートしたドラフト1位ルーキー・度会隆輝は打率.255、3本塁打、24打点、2盗塁。シーズン中盤以降に息切れし、外野の守備でもミスが目立ったが、攻守で伸びしろは十分。短期決戦でシンデレラボーイになれるか。
課題は投手陣だろう。2ケタ勝利をマークしたのは東克樹のみ。13勝4敗、防御率2.16とエースとして申し分ない働きぶりだった。ジャクソン、ケイの両外国人投手は先発ローテーションで回り、ドラフト5位右腕の石田裕太郎は12試合登板で4勝を挙げたが、大貫晋一、濵口遥大、石田健大と主戦格で期待された投手たちが稼働しなかった。救援陣もウェンデルケンが故障で4カ月近く離脱し、伊勢大夢、山﨑康晃が痛打を浴びる場面が目立ったため、守護神・森原康平につなぐ「勝利の方程式」の構築に苦心した。今季48試合登板で防御率2.20の好成績を残した坂本裕哉、新加入の中川颯、佐々木千隼、ウィックなどをCSでどのように起用するか。三浦大輔監督の起用法が注目される。
CSファーストステージは東、ジャクソンの先発が予想される。敵地・甲子園での試合だが、1戦目に東で勝利をつかめば波に乗れる。強力打線が才木を攻略し、試合の主導権を握れるか。
【文責:週刊ベースボール】