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【セCSファイナルS展望】4年ぶりV奪回の巨人、DeNAは3位から下克上なるか

 セ・リーグの「2024 JERA クライマックスシリーズ セ」ファイナルステージが10月16日から行われ、1位・巨人がファーストステージを突破した3位・DeNAを東京ドームで迎え撃つ。

 巨人は阿部慎之助監督が就任1年目で4年ぶりのリーグ優勝を飾った。戦力が他球団に比べて抜きん出ていたわけではない。レギュラーとして計算していた三塁・坂本勇人、遊撃・門脇誠が打撃不振でスタメン落ちすることも。坂本はファーム降格も経験した。貧打が深刻な状況だったが、起爆剤となったのが5月に途中加入したヘルナンデスだ。広角に長打を飛ばし、得点圏打率.352と勝負強さを発揮。さらに、本職が捕手の大城卓三を一塁で起用する攻撃的なオーダーが機能したことで得点力が上がった。7月に月間成績14勝6敗と大きく勝ち越し、上昇気流に乗った。

 ヘルナンデスは8月11日の中日戦(バンテリンドーム)で、外野守備でスライディングキャッチを試みた際に左手首を骨折して戦線離脱。大きな痛手となったが、この状況でも新戦力が奮闘した。7月に途中加入したモンテスがクリーンアップに定着し、8月に月間打率.358と活躍。本職は内野手だが、不慣れな左翼の守備をそつなくこなした。ヘルナンデスに代わって、一軍に昇格した高卒2年目の浅野翔吾も殊勲打を連日放ち、スタメンに定着。9月は攻守で1年間牽引した岡本和真、吉川尚輝が絶好調で勢いを加速させる。2位・阪神が猛追してきたが振り切り、2年連続Bクラスから頂点に上り詰めた。

 投手陣で活躍が際立ったのが、菅野智之だ。昨年は自己ワーストの4勝に終わったが、今季は15勝3敗、防御率1.67で最多勝、最高勝率(.833)のタイトルを獲得。菅野1人で貯金12を稼げたことが非常に大きかった。エースの戸郷翔征も5月24日の阪神戦(甲子園)でノーヒットノーランを達成するなど、シーズンを通じて安定した投球を続けて12勝8敗、防御率1.95をマーク。自身2度目の最多奪三振(156)に輝いた。山﨑伊織は後半戦に苦しんだが、10勝で2年連続2ケタ勝利をマーク。プロ5年目左腕の井上温大も頭角を現した。勝負所で攻撃的な投球を貫けるようになり、8勝5敗、防御率2.76。不安定だった救援陣を立て直せたことも白星を重ねられた要因だ。バルドナード、ケラー、高梨雄平、船迫大雅、泉圭輔、平内龍太らさまざまなタイプの投手をそろえ、救援防御率2.27は阪神と並んでリーグトップタイ。絶対的守護神・大勢は43試合登板で1勝2敗29セーブ5ホールド、防御率0.88と抜群の安定感だった。

 ファイナルステージは1戦目が戸郷、2戦目が菅野の先発が有力視される。今季DeNAとの対戦成績は16勝8敗1分と大きく勝ち越し。1勝のアドバンテージがあり、有利な状況であることは間違いないが、得点力の高い相手打線を乗せると厄介だ。痛めていた左脇腹の回復が間に合わず出場が絶望的となった吉川の不在も痛いが、シーズンと同様に守り勝つ野球を徹底し、試合の主導権を握りたい。

 DeNAはCSファーストステージで2位・阪神に2連勝。投打ががっちりかみ合った戦いぶりでチームの状態は良い。1戦目は先発のエース・東克樹が4回まで無失点に抑えたが、走塁の際に左太腿裏に違和感を覚えて交代。緊急降板は想定外の事態だったが、5回以降は継投策で阪神打線を抑えて3対1で先勝した。2戦目は15安打10得点と打線が爆発。先制された直後の2回に戸柱恭孝の3点右中間適時二塁打、牧秀悟の中前適時打で4点を奪うと、その後もフォードの右越えソロ、佐野恵太の右越え3ランと得点を重ね、10対3で大勝した。

 破壊力抜群の打線は火がつくと止まらない。中軸を担う牧、佐野、オースティンはバットが振れており、若手成長株の梶原昂希、森敬斗がチャンスメークすることで切れ目のない打線になっている。ファイナルステージで対戦が予想される相手先発・戸郷に対し、今季5試合登板で防御率1.54と抑えられているが、打線が攻略して1勝1敗のタイにすれば勢いがつく。心配なのが主力選手たちのコンディションだ。東はファイナルステージの登板が厳しい見通しで、宮﨑敏郎もファーストステージ2戦目で走塁中に負傷交代。15日に横浜スタジアムでの全体練習に参加して回復ぶりをアピールしたが、「右下肢のつり」で状態が気になる。

 DeNAが日本シリーズに進出した7年前の17年は、シーズン3位からCSファーストステージで阪神に2勝1敗で勝ち進み、ファイナルステージも広島を4勝1敗で制した。日本シリーズではソフトバンクに2勝4敗で敗れたが、今年の短期決戦も7年前と同様に、甲子園での戦いから勢いに乗って突っ走るか。「一戦必勝」で下克上を目指す。

【文責:週刊ベースボール】