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【記録員コラム】サヨナラ二塁打を得るために

 野球の試合において盛り上がる場面の一つとして、サヨナラで勝敗が決まる時が挙げられるかと思います。私も公式記録員になる前、球場でプロ野球観戦をしていてサヨナラの場面に遭遇した際の球場の盛り上がりをよく覚えています。しかしながら、サヨナラの場面においては通常の場面とは異なる野球規則が存在するため、実は公式記録員としては特に冷静さが必要な瞬間ですので、その一部を紹介したいと思います。

 2019年6月1日、東京ドームでの巨人対中日10回戦において、9回裏二死二塁、5-5の同点の場面で巨人の坂本勇人選手がライトの頭上を越える打球を放ち、二塁走者が生還しサヨナラで勝敗が決まりました。
 この試合の公式記録員は私でしたが、坂本選手の打席結果を「ライトオーバーの単打」と記録しました。打球はライトの頭上を越えていったので、普通であれば「ライトオーバーの二塁打」となりそうにも関わらず、です。
 私が記録を「単打」とした理由は、下記の野球規則に基づくものです。

野球規則 9.06 単打・長打の決定
安打を単打と記録するか、二塁打、三塁打または本塁打と記録するかは、次によって決定する。
(f) 本条(g)の場合を除いて、最終回に安打を放って勝ち越し点をあげた場合、打者には勝ち越し点をあげた走者がその安打で進んだ塁と同じ数だけの塁打しか記録されない。しかもその数だけの塁を触れることが必要である。
(g) 最終回、打者がフェンス越えの本塁打を放って試合を決した場合は、打者および走者があげた得点の全部を記録する。

 つまり、サヨナラで勝敗が決した際、打者が二塁打の記録を得るには二塁に、三塁打の記録を得るには三塁に触れなければなりません。
 ですので、先ほどの場面で私は何を見ていたかというと、打球がライトの頭上を越えてフェア地域に落下したことを確認後、二塁走者の本塁生還と、打者走者が一塁を回ってどこまで進むか、というところです。この時は二塁に触れることなく一二塁間の途中で止まったため、記録を「単打」としました。言い換えれば、同じ場面で二塁に触れていれば「二塁打」としていました。

 ただし、「打者には勝ち越し点をあげた走者がその安打で進んだ塁と同じ数だけの塁打しか記録されない」とあるので、最終回、同点で走者三塁の場面であれば、打者が長打コースに打球を放ち二塁や三塁に触れたとしても、記録は「単打」ということになります。勝ち越し点をあげた走者は三塁にいたので、本塁へ一つ進んだに過ぎないからです。

 補足として、打者がバウンドしてスタンドへ入る打球、いわゆる「エンタイトルツーベース」となるような安打を放ったとしても、この野球規則は適用されるので、最終回同点の走者二塁であれば打者が二塁打を得るためには二塁に触れる必要がありますし、走者三塁であればたとえ打者走者が二塁に触れても「単打」の記録しか与えられません。
 実際にこのようなケースがあったのを、2017年に下記のコラムで紹介しています。

【記録員コラム】エンタイトル二塁打なのに・・・

 本塁打に関しては、先ほど記載した野球規則9.06(g)によって得点の全部が記録されるので、最終回同点からのサヨナラ満塁本塁打があり得るということになります。もちろん、全ての塁に正しく触れることは必要です。

 球場が大いに盛り上がる瞬間であるサヨナラの場面、公式記録員は球場内とは実に対照的に冷静に状況を判断し記録を決定します。もし皆さまがサヨナラの場面に遭遇したならば、打者走者の進んだ位置に注目してみてください。それが公式記録と合致しているかを確認するというのも面白いのではないでしょうか。

【NPB公式記録員 伊藤亮】