【パCSファイナルS展望】春先の出遅れからリーグ連覇のソフトバンク、力をつけた日本ハムは悔しさを晴らせるか
パ・リーグの「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージが10月15日から行われ、1位・ソフトバンクがファーストステージを突破した2位・日本ハムをみずほPayPayドーム福岡で2年連続で迎え撃つ形になった。
昨年は貯金42で首位を独走したソフトバンクだったが、今年は春先に大きくつまずいた。栗原陵矢、近藤健介、柳田悠岐、今宮健太、周東佑京など主力に故障者が続出。3、4月は9勝15敗2分と負け越して最下位に沈んだ。この苦境で奮闘したのが、今まで定位置を勝ち取れなかった選手たちだった。牧原大成、野村勇、柳町達、川瀬晃が台頭して逆襲に転じる。甲斐拓也が昨オフに巨人にFA移籍したため捕手が懸案事項だったが、海野隆司、嶺井博希が好リードで牽引した。5月以降は月間勝率が6カ月連続で6割を超え、貯金35まで積み上げた。単独最下位を20日間経験してリーグ優勝したのは、プロ野球史上最長タイ記録だった。
投手陣も想定外の事態を救った。守護神のオスナの状態が上がらず、6月中旬に登録抹消されると、抑えに抜擢された杉山一樹が65試合登板で3勝4敗31セーブ10ホールド、防御率1.82をマーク。常時150キロを超える直球と落差の鋭いフォークを武器に、最多セーブのタイトルを獲得した。セットアッパーは松本裕樹が51試合登板で5勝2敗39ホールド、防御率1.07で最優秀中継ぎ投手に。先発陣は有原航平が14勝を挙げて2年連続最多勝、モイネロが防御率1.46で2年連続最優秀防御率を受賞。大関友久が13勝5敗、防御率1.66で自身初のタイトルとなる最高勝率(.722)とエースの2人と遜色ない安定感を発揮し、新加入の上沢直之も8月以降に6連勝で12勝6敗、防御率2.74と先発ローテーションできっちり稼働した。
牧原大は首位打者、柳町は最高出塁率と自身初のタイトルを獲得して大きな自信になっただろう。周東は右腓骨骨折で約1カ月間戦列を離れた期間があったが、4度目の盗塁王を獲得した。チーム内の競争がハイレベルになり、主力はウカウカしていられない。昨年は本塁打、打点の2冠に輝いた山川穂高も打撃不振が長引き、スタメンを保証されていない。勝負強さが光るベテランの中村晃が控えており、攻撃面で起用法の幅が広がっている。
昨年は4年ぶりのV奪回を飾ったが、日本シリーズでDeNAに2勝4敗で敗れた。リーグ連覇を飾った今年は頂点を目指し、もう一度手綱を引き締める。CSファイナルステージは1戦目からモイネロ、有原、上沢、大関が先発予定。昨年は1勝のアドバンテージを含めて日本ハムに4勝0敗と圧倒したが、熾烈な優勝争いを繰り広げた強敵だ。今季の対戦成績は13勝12敗と拮抗しており、手に汗握る試合展開が予想される。
2年連続2位の日本ハムはCSファーストステージで、オリックスに2連勝。1戦目に先発登板したエース・伊藤大海が7回4安打9奪三振無失点の快投でCS初勝利を飾ると、2戦目は劣勢をひっくり返した。3点のビハインドを追いかける3回一死一、二塁の好機で清宮幸太郎が左中間突破の2点適時三塁打で1点差に迫ると、8回二死一、二塁で本塁打王と打点王の2冠に輝いたレイエスが右翼フェンス直撃の2点適時打を放って逆転。抑えに抜擢された齋藤友貴哉が2試合連続セーブで試合を締めた。
選手層が厚くなり、攻撃のバリエーションが多彩になったことが、日本ハムの強みになっている。不安材料だった救援陣も金村尚真、上原健太を先発から配置転換したことで安定感が高まった。特に目を見張る活躍を見せているのが上原だ。今年は6月29日に一軍初昇格すると、27試合登板で3勝1敗13ホールド、防御率1.11とセットアッパーとして活躍。CSファーストステージでは第2戦の7回から登板すると2回無安打無失点の快投で、逆転勝利を呼び込んだ。ファイナルステージで対戦するソフトバンクは近藤、柳田、柳町など左の強打者がそろっている。勝負どころで起用される上原の投球がポイントになりそうだ。
2年連続最下位から2位にジャンプアップした昨年はソフトバンクに13.5ゲームの大差をつけられたが、今年はシーズン終盤まで食い下がり、83勝で貯金26を積み上げた。4.5ゲーム差でリーグ優勝に届かなかったが、チーム力は間違いなく上がっている。ファイナルステージも「全員野球」のスタイルは変わらない。シーズンのリベンジを果たすために、新庄剛志監督が驚きの一手を打つ可能性がある。シンデレラボーイの誕生が楽しみだ。
【文責:週刊ベースボール】