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【記録員コラム】「公認野球規則」の発行

 私が公式記録員として仕事をするにあたり、「公認野球規則」という本は最も大事なものであり、常に持ち歩いています。試合中、難しいプレイがあった時に確認のため読み返すのはもちろんのこと、夜中ふと気になったことを調べるためにめくるということもしばしばです。

 この「公認野球規則」は1956年に初めて発行され、その名の通り野球に関するあらゆる規則が書かれています。日本で初めてプロ野球の試合が開催されたのは1936年なので、「公認野球規則」が発行されるまではプロ野球と学生などのアマチュア野球ではそれぞれの団体で定められた規則に基づいて試合が開催されていました。
 そんな中で1956年に日本の野球界で統一された「公認野球規則」の発行がいかに大きな進歩だったかということがはしがきから読み取れるので、紹介したいと思います。

1956年 公認野球規則 はしがき(抜粋)

 プロフェッショナルとアマチュアの如何を問わず、日本の野球界のどの部門にも通用する野球規則というものがあってもいいではないかという声が最近非常にたかまってきた。
 全国プロフェッショナル野球機構とアマチュア野球五団体は、そこで互いに協調してこの要望にこたえ、日本の野球界全体に適用できる規則を作ることとし、同時に規則書も一つのものとすることを申し合わせた。
 こうしてでき上がったのが本書であるが、一九五六年三月一日からこの規則は効力を持つことになる。
 日本の野球規則の根幹をなしているのは、いうまでもなく米国オフィシャル・ベースボール・ルールズだが、これを基に、なるべく日本のものらしい規則をつくり上げるよう努力した。
 “ただ一つの規則”が日本の野球界にでき上ったということは野球史上画期的なことであるという喜びを以て本書を諸兄に贈る次第である。

 こうしてできた「公認野球規則」は以降、毎年大小の改正がなされています。上記はしがきの文中にあった通り、「公認野球規則」はアメリカの「OFFICIAL BASEBALL RULES」に基づいているという背景を現在も引き継いでいるので、アメリカでのルール改正をどう日本に取り入れるのか、毎シーズンオフに日本野球規則委員会において検討されたうえで、その年の「公認野球規則」が発行されます。
 とはいえアメリカでのルール改正を全てそのまま取り入れるということではなく、日本の野球界にとってより良い形を探っていくという構図は、小技や足を絡めて日本独自の強さを発揮する侍ジャパンと重なるものがあると私は感じます。

 私は公式記録員という仕事柄、一般の方から野球の規則について質問されることがあります。それに対して私は「公認野球規則」に基づいて答えますが、するとよく「それはプロ野球のルールでしょう」と言われます。もちろん、各野球団体におけるルールや、グラウンドルールといったことはありますが、プロ野球でも学生野球でも少年野球でも草野球でも、根本は「公認野球規則」に基づいており、日本野球界において唯一無二の存在であるということをご理解いただけたらと思います。

【NPB公式記録員 伊藤亮】

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