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【記録員コラム】ボークの球を打つ

 2025年も6月となり、プロ野球界では日本生命セ・パ交流戦が始まりました。普段とは異なる対戦を楽しんでいるファンの方も多いかと思います。

 さて突然ですが、読者の皆様は「ボーク」と聞くとどのような状況を思い浮かべるでしょうか。投手に何らかの反則行為があり、塁上の走者が1つ進塁する、というのがいわゆる“普通のボーク”だと思います。

 しかしながら先日、“ボークの球を打つ”という少し珍しいプレイが起きました。ボークの球を打っても有効になるのか、そもそもボークの球を打ってもいいのか等、疑問が沸いてくるかと思いますので、解説していきます。

 2025年5月18日、ソフトバンク対楽天9回戦(みずほPayPayドーム)での3回表無死一塁、打者は太田光選手の場面です。上沢直之投手が初球を投じると、三塁塁審がボークを宣告しました。プレイは続き、太田選手がこの投球を投手前にバント、上沢投手は二塁に送球するも悪送球となり無死一、二塁になりました。流れとしては下記の通りです。

  1. 無死一塁の場面。
  2. 上沢投手が初球を投じる。
  3. 三塁塁審がボークを宣告。
  4. 太田選手がこの投球を投手前にバント。
  5. 上沢投手は二塁に送球するも悪送球となってセーフ。
  6. 無死一、二塁となる。

 結論からすると、ボークの球は打ってもOKです。ただし、それがプレイとして生きるかどうかは、打者と走者がどのような状況になったかによります。それは、野球規則のボークの項に下記の記載があるからです。

6.02 投手の反則行為

(a)ボーク
ペナルティ(a)項各規定によってボークが宣告されたときは、ボールデッドとなり、各走者は、アウトにされるおそれなく、1個の塁が与えられる。
 ただし、ボークにもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、かつ、他のすべての走者が少なくとも1個の塁を進んだときには、このペナルティの前段を適用しないで、プレイはボークと関係なく続けられる。

 解説すると、先のプレイでは上沢投手の失策によって結果的に打者は一塁に達し、かつ、一塁走者も二塁に進んだので、プレイはボークと関係なく続けられた、つまりボークの球を打ったことがプレイとして生かされたということになります。上沢投手にボークも記録されません。

 もし、上沢投手が二塁に好送球して一塁走者がアウト、あるいは一塁に送球して打者走者がアウトになっていたならば、ボークが適用されて(3)の時点でボールデッドということになり、無死二塁から太田選手が打席に戻って再開となっていました。打者か走者のどちらかでもが1個の塁を進めなかった場合、「プレイはボークと関係なく続けられる」という要件を満たさないからです。

 以上のことから、もし私が打者だったならば、ボークの球は必ず打ちにいきます。ヒットを打てばそれはプレイとして生かされるし、逆に打者か走者がアウトになるような凡打だったら、ボークが適用されて走者が進塁したうえで再び打席に立てるからです。

 今回のコラムで紹介した野球規則を覚えておけば、打席に立っている時に審判員がボークを宣告したとしても、動揺することなく、むしろチャンスボールとして捉えることができるのではないでしょうか。なかなか起こる状況ではないですが、“ボークの球を打つ”、覚えていて損はないと思います。

【NPB公式記録員 伊藤亮】