【コラム】強力打線に付け入る隙を与えないピッチング、ヤクルト・奥川恭伸がプロ初完封勝利
前日まで交流戦12球団トップのチーム打率.263、26本塁打、81得点を誇った強力打線を完ぺきに抑え込んだ。6月14日のソフトバンク戦(みずほPayPay)に先発したヤクルトの奥川恭伸。勝てば交流戦優勝の可能性が高まる相手に対して「どれだけ自分の力が通用するのかなぐらい開き直ってマウンドに立ちました。行けるところまで行こうと思って、最初から出し切りました」と立ち上がりから力を振り絞った。先頭の正木智也を151キロ直球で見逃し三振に仕留めると、二死からは近藤健介を154キロ直球で空振り三振。伸びやかな直球にスライダー、フォークを効果的に交え、5回までに8三振を奪った。
6回以降も丁寧な投球でソフトバンク打線に付け入る隙を与えない。走者を許しても後続を落ち着いて絶つ。しっかりゾーンに投げ込み、四球はゼロ。二塁を踏ませずに9回を投げ切り、5安打9奪三振無失点。「良かったからゼロに抑えられたのでしょう。これから(パ・リーグでは)当たることがないから」と敵将・小久保裕紀監督を脱帽させるピッチング。今季3勝目をレギュラーシーズンではプロ7年目で自身初となる完封で飾った。
「すごく気持ち良かったです。最後までマウンドにいるということがなかったので、うれしかった。どんどんストライクを投げ、攻めて投球できたところが良かったと思います」
星稜高3年時に夏の甲子園で準優勝に輝き、大きな注目を浴びて2020年ドラフト1位でヤクルトに入団。2年目には9勝をマークし、クライマックスシリーズでは巨人相手に完封勝利を挙げた。オリックスとの日本シリーズ初戦でも山本由伸(現ドジャース)と投げ合い7回1失点の好投で20年ぶりの日本一に貢献。将来のエースとして大きな期待をかけられたが、その後は右肘を痛めた影響で思うような投球ができず。23年には一軍登板がゼロ。苦しい日々を過ごしたが、昨年は開幕投手を務めるなど復活の兆しを見せていた。
真価が問われる2026年に向け、追求してきたのは脱力して出力を上げる投球フォームだ。今春キャンプでは投げ込みをしながら、投球フォームの成熟に努めた。「球数を重ねていくと、その力感の中で力を入れる感覚が出せるようになってきます。力まずに140キロでもいいから、その力感の中で150キロに上げていく。頭で考えるよりも、体が覚えていく。規定投球回を目標にしているので、シーズンで楽に投げられますし、質、コントロールも改善できます」。奥川が練習に励む姿を目にした池山隆寛監督は「意気込みと自覚は大いにこちらにも伝わってきているし、軸になるような責任感は持っていると思う」と目を細めていた。
昨秋キャンプで行ったインタビューでは「本当のことを言うと、今までのインタビューはウソばかりでした。本当は大丈夫じゃないのに『大丈夫です』って笑ったり、本当は痛いのに『痛くないです』って言ったり。でも、今は本当に来年が楽しみで、手応えを感じています。ぜひ、期待してください」と飛躍の予感を口にしていた奥川。それが現実のものとなりつつある。
「またレギュラーシーズンも、もっと勝てるように頑張りたい」
ヤクルトがセ・リーグの優勝争いを勝ち抜くために、背番号18のさらなる好投は欠かせない。
【文責:週刊ベースボール】