【コラム】ソフトバンク・栗原陵矢が両リーグ最速30号、現状に満足せず高みを目指す信念
ソフトバンク・栗原陵矢が、ついに新たな境地へ到達した。
7月24日の西武戦(ベルーナドーム)。1点を追う4回無死一、三塁で、背番号24が放った打球は左中間席へ吸い込まれ、試合をひっくり返す逆転3ランとなる。これが両リーグ最速の30号本塁打だ。「絶好のチャンスを絶対に生かそうと思った。最高の形になって良かった」と笑みを浮かべた。本人の感覚では左飛になると思っていたという。「意外と飛んでくれた。スタンドまで行くとは思わなかった」と振り返り、自身も予想外の一発だったことを明かす。この一発で、ソフトバンクでは2024年の山川穂高以来となる両リーグ最速30号到達を果たした。
だが、この数字は決して偶然ではない。今季の栗原は開幕から安定して長打を量産。前半戦だけで自己最多本塁打を更新し、本塁打王、打点王争いの中心に立っている。それでも本人に慢心はない。「納得する数字もあれば、打席もあります。でも、もっともっとできたなというところもあります。現状すべてに満足はしていません」。周囲が「覚醒」と評するシーズンでも、自らには厳しい。だからこそ成長は止まらない。本塁打が急増した理由についても、「これだ」という答えは持っていないという。
「正直、コレというのは分からない。でも、オフシーズンに体づくりを含めてしっかりやってきたことは大きいと思います」。ウエート・トレーニングを見直し、これまで以上に高い負荷を扱えるようになった。その成果は170キロ台後半を計測した打球速度にも表れている。「去年まではなかなか出せなかった数値です。今は芯に当てさえすれば鋭く飛んでいってくれる。すごく自信になっています」。
打撃フォームを大きく変えたわけでもない。修正したのは右足の着き方や重心移動といった細部だけ。「しっかり前足の軸で振る」という感覚を磨いた結果、強く振り切れるようになった。そして、もう一つの大きな変化が「健康」への意識だ。栗原はこれまで幾度となく故障に苦しんできた。昨季もオープン戦でフェンスに激突して右脇腹を負傷。シーズン中にも同箇所を痛め、日本一後のオフには腰の手術も受けた。
だからこそ、今季は何よりも「1年間グラウンドに立ち続けること」をテーマに掲げた。故障を繰り返した過去があるからこそ、コンディション維持を最優先に据えてシーズンへ臨んだ。30号到達後、好調の要因を問われると、真っ先に口にしたのも「日々、健康に過ごせていることが一番」という言葉だった。豪快な本塁打を支えているのは、地道なコンディショニングへの取り組みの積み重ねだ。
今季は選手会長にも就任した。人前で話すことは得意ではなく、「トップに立つタイプではない」と自己分析する。それでも変わる必要があると考えた。「僕自身、変わっていかなきゃいけないと思いました。変わらなければ、この世界でもっと長く野球をやれないと感じました」。
両リーグ最速30本塁打は、栗原にとってまだ通過点に過ぎない。四番として、そして選手会長としてチームをけん引する覚悟を胸に、さらなる高みを見据え、今日もただ目の前の1打席に向き合い続ける。
【文責:週刊ベースボール】