【コラム】座右の銘は『花よりも花を咲かせる土となれ』、存在感を発揮する電撃移籍のソフトバンク・山本祐大
左翼席へ飛び込んだ一発は史上11人目の快挙となった。5月28日巨人戦(東京ドーム)、7回二死一塁でソフトバンク・山本祐大が中川皓太の145キロ直球をフルスイング。「打球が低かったので入らないと思っていました。入ってくれて良かったです」と苦笑いを浮かべたが、9年目で初めて東京ドームで本塁打を放ち8対4とリードを広げ、巨人にとどめを刺した。
2024年にベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を受賞するなどDeNAの正捕手として君臨していた山本祐だが、5月12日にソフトバンクへ電撃トレード。今季はDeNA在籍時の4月30日中日戦(バンテリンドーム)で1号、5月22日日本ハム戦(みずほPayPay)で移籍後初アーチを記録。史上11人目の同一シーズン両リーグ本塁打を達成していたが、それに加えて交流戦でも本塁打を放ったのは山本祐が初めてだった。
「セ・リーグで一番いいキャッチャー」と小久保裕紀監督も絶賛するほど大きな期待を受けての移籍。チーム合流初日となった5月13日西武戦(みずほPayPay)で即スタメン。無安打でチームも敗戦し、「散々でしたね」と本人は悔しがったが努力を怠らない。移籍直後から投手陣とのコミュニケーションを深め、同じ捕手の海野隆司と積極的に会話。チームになじもうとする姿勢を見せると、5月29日広島戦(みずほPayPay)では初めてバッテリーを組んだ大関友久を完封勝利に導いた。移籍後、打率.350もマーク(6月1日現在)。攻守で存在感を発揮している。
山本祐は配球の際、考慮することが大きく分けて3つあるという。それは①投手、②打者、③状況だ。この3つを複合的に考えて、投手にサインを出す。
「僕の場合、最も優先するのはピッチャーになります。個人的な考え方として、キャッチャーの最大の仕事はピッチャーに気持ちよく投げてもらうこと。それを引き出すことができれば勝利に直結していきます。それを念頭に置き、当日の調子を見て勝負球は何にするのか、どこで使うのかを考えながら組み立てていくことになります。ただ、ピッチャーの一番いい球だけでは打ち取ることはできません。時にはピッチャーが考えていることとは違うサインを出さなくてはいけないときもあります。そのときに信頼してその球を投げてもらえるかどうかは、日ごろのコミュニケーションや信頼関係の構築が重要になります」
自身の強みを「駆け引きができること」と自己分析。配球に根拠を持たせる作業が重要で、その正解を見つけにいくことが捕手としての醍醐味だともいう。選択肢が多いほど打者を惑わせることができ、打ち取る可能性が高まる。引き出しが多いことは名捕手の条件の一つだが、山本祐はそれを兼ね備えている。
座右の銘は『花よりも花を咲かせる土となれ』。投手の人生を背負ってサインを出すのが捕手。投手という花をいかに咲かせられるかを追い求めていけば、捕手としていい野球人生になる――それが自身の哲学だ。
6月5日からは古巣・DeNAとの対戦が控えているが、山本祐の脳内に蓄積された膨大な「生きたデータ」は計り知れない武器となる。ソフトバンクの10度目の交流戦優勝はもちろん、さらにその先のリーグ3連覇へ。背番号39の活躍がカギを握るのは間違いない。
【文責:週刊ベースボール】