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【コラム・交流戦見どころ】通算成績はパ・リーグの勝ち越しも、近年はセ・リーグが2年連続勝ち越し。交流戦優勝争いのダークホースは日本ハムか

 「日本生命セ・パ交流戦2023」は5月30日に開幕し、6月18日まで計108試合の熱戦が繰り広げられる。過去17回の通算成績ではパ・リーグが1199勝1070敗71分と大きく勝ち越しているが、21、22年はセ・リーグが2年連続で初の交流戦勝ち越し。両リーグの力は実力伯仲といってよいだろう。昨年はヤクルトが14勝4敗で4年ぶり2度目の交流戦優勝。交流戦全カード勝ち越しで18試合制となった15年以降で初の完全優勝を達成し、その勢いに乗ってリーグ2連覇を飾った。交流戦の成績で順位が大きく変動する可能性がある。最下位に低迷している楽天、中日は逆襲のきっかけをつかめるか。

 パ首位のロッテは、吉井理人新監督の下で投打ががっちりかみ合っている。投手陣は佐々木朗希、種市篤暉、小島和哉、西野勇士、メルセデスが先発ローテーションで安定した投球を続け、救援陣も澤村拓一、ペルドモ、西村天裕、坂本光士郎から守護神・益田直也につなぐ「勝利の方程式」が稼働している。打線はドラフト1位で入団後に伸び悩んでいた藤原恭大、安田尚憲に素質開花の予感が。茶谷健太、田村龍弘の奮闘も目立つ。交流戦は05年に初代王座に輝くと、06年も連覇。今年も強さを発揮して首位を突っ走りたい。

 パ2位のオリックスは、リーグ3連覇に向けて春先は上々のスタートを切った。昨オフに西武からFA移籍した森友哉、打撃好調の頓宮裕真を中心にリーグトップの得点力を誇る。5月上旬に左ふくらはぎ痛で3週間戦列を離れた杉本裕太郎の復帰も心強い。育成入団で1年目から主にリードオフマンとして活躍している茶野篤政、力強い投球で先発ローテーションに定着した山下舜平大と新戦力の台頭も光る。交流戦は中日に26勝38敗1分と苦手にしている。カギを握るカードになりそうだ。

 パ3位のソフトバンクは交流戦で過去8度の優勝を誇り、通算228勝144敗18分、勝率.613と12球団で唯一勝率が6割を超えている。昨オフは3年ぶりのリーグ奪回に向け、大型補強を敢行。5月に入って着実に貯金を積み重ねて良い形で交流戦に入れる。キーマンは柳田悠岐だ。昨年の交流戦は打率.226、0本塁打、6打点と苦しんだ。今季は打撃好調で大暴れに期待したい。投手陣は先発が踏ん張り、セットアッパーのモイネロ、守護神のオスナと強固な勝利の方程式につなぐ試合展開で白星を稼いでいく。

 新庄剛志監督就任2年目の日本ハムはパ4位だが、選手たちは確実に力をつけている。特に先発陣は加藤貴之、上沢直之、伊藤大海、メネズ、鈴木健矢、北山亘基が好投し、主導権を握る試合が増えている。加藤貴は昨年の交流戦で4試合先発し、26イニングで無失点と抜群の安定感だった。今年もセ・リーグ相手に快投を見せられるか。自身初の首位打者を獲得した松本剛も昨季の交流戦で打率.342、2本塁打、13打点と活躍している。若いチームは勢いに乗ると強い。交流戦の優勝争いでダークホースになるかもしれない。

 パ5位の西武は5月に入って失速。交流戦を巻き返しの転機にしたい。意外なことに交流戦優勝は過去に一度もなく、巨人に25勝37敗3分と大きく負け越している。昨年の3連戦は2勝1敗と勝ち越しており、今年も相性の悪さを払拭する戦いを見せられるか。交流戦歴代トップの79本塁打をマークし、今年は打撃の状態が良かったベテラン・中村剛也の打棒が期待されたが27日に外腹斜筋損傷で登録抹消。代わりに四番抜てきの2020年ドラフト1位・渡部健人が長打力を発揮できるかがチームの行方を左右する。

 楽天はパ最下位と低迷しているが、経験豊富な選手がそろっている。交流戦は通算182勝203敗5分とパ・リーグの球団で唯一負け越しているが、上位浮上の足掛かりをつかみたい。交流戦の成績を見ると、岸孝之が通算23勝18敗、田中将大が通算21勝10敗1セーブ、則本昂大が16勝9敗と際立った成績を残している。岸、田中将は今季思い描いた活躍ができていないが、復調できるか。打線は打撃不振の浅村栄斗、島内宏明がポイントゲッターとして稼働しなければ、得点力が上がらない。

 セ首位の阪神は、投打で他球団を圧倒する戦いを見せている。今季から就任した岡田彰布監督のチーム改革も的中し、二塁にコンバートされた中野拓夢、遊撃の定位置に返り咲いた木浪聖也が活躍。近本光司がチャンスメークし、ノイジー、大山悠輔、佐藤輝明の強力クリーンアップで得点を積み重ねる。投手陣は青柳晃洋、西勇輝がピリッとしない中、大卒3年目の村上頌樹、現役ドラフトでソフトバンクから移籍した大竹耕太郎が快投を続けている。交流戦は21、22年と2年連続2位。今年はチーム初の頂点を狙う。

 セ2位のDeNAは交流戦通算157勝222敗11分。勝率.414は12球団ワーストだが、苦手意識はないだろう。19年は10勝7敗1分で4位、21年は9勝6敗3分で3位、昨年は9勝9敗で6位と近年は決して悪い成績ではない。エース・今永昇太は昨年の交流戦で2勝0敗、防御率0.86と安定感抜群だった。佐野恵太、宮﨑敏郎、牧秀悟を中心とした打線もパ・リーグに見劣りしない。25年ぶりのリーグ優勝に向け、この交流戦が大きなポイントになる。首位・阪神との差を縮めるためにも、貯金を1つでも多く増やしたい。

 セ3位の広島は19、21、22と3回連続で交流戦最下位に沈み、パ・リーグとの対戦が鬼門になっている。昨年も交流戦前は25勝19敗2分と好調な滑り出しだったが、交流戦で5勝13敗と大失速。オリックス、ソフトバンクに同一カード3連敗を喫するなど苦戦し、ペナントレースで優勝争いから脱落した。西武時代に中心選手として活躍した秋山翔吾を中心に、選手個々の能力は高い。先発陣を担う大瀬良大地、九里亜蓮、森下暢仁、アンダーソンが本来の力を発揮できれば、互角以上の戦いに持ち込めるだろう。

 3年ぶりの覇権奪回を狙う巨人はセ4位。徐々に戦力を整え借金1までこぎつけた。交流戦は196勝182敗12分、勝率.519でセ・リーグの球団で唯一の勝率5割超え。ただ、ソフトバンクに25勝40敗と大きく負け越しており、意地を見せたい。坂本勇人、丸佳浩、中田翔、岡本和真と強打者が並ぶ中、初の交流戦出場で真価が問われるのが、若手成長株の秋広優人だ。今季は長打力とミート能力を兼ね備えた打撃で好成績をマーク。初対戦となるパ・リーグの投手たちにどのような打撃を見せるか楽しみだ。

 リーグ3連覇を狙うヤクルトはセ5位と試行錯誤している。大きな誤算は、昨季56本塁打の日本選手記録を樹立し、三冠王に輝いた村上宗隆の打撃不振だろう。替えが利く選手ではないので、打棒爆発が浮上に不可欠な条件となる。昨季は交流戦で圧倒的な強さを見せて優勝。村上も打率.351、6本塁打、13打点でMVPに輝いた。地力があるチームだけに、今年も交流戦で息を吹き返す可能性は十分にある。球界最年長の石川雅規は交流戦歴代トップの27勝をマーク。今年も白星を積み重ねたい。

 セ最下位に低迷する中日は、課題の得点力不足を払拭できるか。DeNAから現役ドラフトで移籍した細川成也が三番で活躍し、故障から復帰した石川昂弥も四番でスケールの大きい打撃を見せている。キーマンは今季2度のファーム降格を経験したビシエドだろう。交流戦は相性が良い。21年は交流戦トップの打率.409をマーク。昨年も打率.328、3本塁打、10打点の好成績を残している。涌井秀章は交流戦歴代4位の通算25勝を記録。パ・リーグの打者たちの特徴は熟知しているだけに期待大だ。

【文責:週刊ベースボール】