【コラム・交流戦見どころ】通算成績はパ・リーグ勝ち越しも、昨年はセ・リーグに軍配、最下位低迷の日本ハム、阪神は巻き返せるか
「日本生命セ・パ交流戦2022」は5月24日に開幕し、6月12日まで計108試合の熱戦が繰り広げられる。過去16回の通算成績ではパ・リーグが1146勝1015敗71分と大きく勝ち越したが、昨年はセ・リーグが49勝48敗11分で09年以来12年ぶり2度目の交流戦勝ち越し。両リーグの実力は拮抗している。昨年はオリックスが12勝5敗1分で11年ぶり2度目の交流戦優勝を飾り、25年ぶりのリーグ優勝に駆け上がった。交流戦の戦い方はペナントレースの行方も左右する。順位が大きく変動する可能性があるため、最下位に低迷している日本ハム、阪神も逆襲の足掛かりにしたい。
パ首位の楽天は日本ハムから加入した西川遥輝の貢献度が高い。3、4月は月間打率.333、5本塁打、21打点、7盗塁と月間MVPに選ばれる活躍でリードオフマンとしてチームを牽引している。5月に入り打率を下げているが、交流戦を復調のきっかけにできるか。田中将大、則本昂大、岸孝之、早川隆久、瀧中瞭太と先発陣はそろっている。カギを握るのは通算成績24勝38敗と大きく負け越している巨人戦か。浅村栄斗、島内宏明、マルモレホスのクリーンアップが稼働すれば得点力が一気に上がる。今年は意地を見せたい。
パ2位のソフトバンクは交流戦で過去8度の優勝を誇り、通算219勝135敗18分、勝率.619で12球団トップと圧倒的な成績だ。だが、昨年の交流戦は救援のモイネロ、森唯斗が離脱したことも響いて5勝9敗4分とまさかの失速。ヤクルトに3連敗、DeNAと中日に0勝2敗1分と3球団に1勝もできなかったのが痛かった。藤本博史監督が就任した今年は期する思いが強いだろう。今宮健太が打撃絶好調で、グラシアル、柳田悠岐も状態を上げている。上林誠知が「右アキレス腱断裂」で長期離脱したのは痛手だが、投打ともに戦力は充実している。
昨季のリーグ覇者・オリックスは杉本裕太郎の打撃不振が響き、パ3位ながら勝率5割に満たないなど波に乗れない。だが、交流戦で流れが変わる可能性が十分にある。山本由伸は昨季の交流戦で3勝0敗、防御率1.23でMVPを受賞。打線も福田周平が打率.391、T-岡田が打率.364、吉田正尚が打率.358と好調で12球団トップの96得点を叩き出した。ただ、吉田正は「左大腿部裏の軽度筋損傷」で5月21日に登録抹消。T-岡田は「右ふくらはぎの筋損傷」で今季一軍出場がないが、5月14日にファームで実戦復帰した。交流戦での逆襲に向け、カギを握る存在になりそうだ。
昨季リーグ最下位に沈んだ西武は今季4位だが、「山賊打線」が看板だったチームカラーはガラッと変わった。投手陣がリーグトップの防御率を誇り、強力な救援陣で逃げ切る戦い方が確立されている。平良海馬、水上由伸、森脇亮介、増田達至と快速球を武器にする投手たちが交流戦でどんな投球を見せてくれるか。打線はなかなか得点力が上がらなかったが、右手人さし指骨折で離脱していた森友哉も復帰濃厚で大きな戦力アップになる。四番の山川穂高はハイペースで本塁打を量産。セの好投手たちとの対決は要注目だ。
ロッテはパ5位と低迷しているが、交流戦になると調子を上げる傾向がある。05年に初代王者に輝くと、06年も連覇。通算192勝165敗15分、勝率.538はソフトバンクに次いで2位だ。注目されるのは佐々木朗希だ。4月10日のオリックス戦(ZOZOマリン)で史上16人目の完全試合とプロ野球新記録となる13者連続奪三振を達成。昨季の交流戦は2試合に登板し、5月27日の阪神戦(甲子園)では先発して5回4失点でプロ初勝利を挙げた。今季の交流戦では阪神、巨人戦に登板する可能性が高い。160キロを超える直球で岡本和真、佐藤輝明ら強打者との対決が楽しみだ。
BIGBOSSこと新庄剛志監督が就任した日本ハムはパ最下位だが、最大借金14から順調に減らしている。松本剛が打率.366で首位打者を走り、万波中正、今川優馬、野村佑希、清宮幸太郎と長打力が魅力の若手たちが頭角を現している。伊藤大海が新人だった昨年にブレークのきっかけをつかんだのが交流戦だった。3勝0敗、防御率0.90で日本生命賞を受賞。エース・上沢直之も2勝0敗、防御率1.83ときっちり抑えている。現役時代に阪神でプレー経験があるBIGBOSSは交流戦で「二番・投手」の起用を示唆しており、采配にも注目が集まる。
昨季20年ぶりに日本一に輝いたヤクルトはセ首位で交流戦に入る。通算171勝193敗8分と負け越しているが、苦手意識はないだろう。18年にセ・リーグで2球団目となる優勝を飾り、昨年もソフトバンクに同一カード3連勝を飾るなど10勝8敗と勝ち越している。守護神のマクガフは昨季の交流戦で11試合に登板して9セーブをマーク。勝利への道筋は見えている。百戦錬磨の青木宣親の存在も心強い。塩見泰隆、山田哲人、村上宗隆、オスナが並ぶ強力打線がパの投手たちをどう攻略するか楽しみだ。
セ2位の巨人は交流戦で通算188勝172敗12分、勝率.522とセ1位の成績をマークしている。12年にセで初優勝、14年も2度目の優勝を飾っている。右ヒザ内側側副靭帯損傷で戦線離脱している坂本勇人の早期復帰が待たれる中、ポイントになるのが苦手のソフトバンク戦だ。交流戦で24勝38敗と大きく負け越し、日本シリーズでも19、20年と2年連続4連敗の屈辱を味わった。注目されるのは守護神を務めるドラフト1位右腕・大勢。変則フォームからうなりを上げる剛速球がパの強打者相手にどこまで通用するか。
広島は鈴木誠也が昨オフにカブスに移籍したが、セ3位で首位争いを繰り広げている。菊池涼介、西川龍馬、新外国人・マクブルーム、坂倉将吾と「つなぎ」を意識した打線で相手バッテリーは息を抜けない。春先に不調だった小園海斗も調子を上げてきた。新人の中村健人、末包昇大も勝負強い打撃で貢献している。昨季の交流戦は3勝12敗3分と大失速しただけに、今年は二の舞を避けたい。守護神・栗林良吏は新人の昨年に喫した唯一の黒星が交流戦のオリックス戦だった。今年は完ぺきな火消しでチームも波に乗りたい。
立浪和義監督が就任した中日はセ4位。石川昂弥、岡林勇希、鵜飼航丞、根尾昂と若手を積極的に起用し、チームは変革期を迎えている。交流戦で復調を期待したいのがビシエドだ。昨年は12球団トップの打率.409、3本塁打、9打点で日本生命賞を受賞。特に日本ハム戦で10打数7安打、打率.700と大当たりだった。元オリックスの三ツ俣大樹、元ロッテの加藤翔平はレギュラー獲りに向けて結果を残したい。投手陣も大野雄大、柳裕也、小笠原慎之介、髙橋宏斗と好投手がそろっている。身上の「守り勝つ野球」で白星を積み重ねたい。
セ5位のDeNAは主力に新型コロナウイルス感染や故障者が続出して苦しんでいたが、主力選手たちが戻り、戦力が整ってきた。椎間関節炎で戦線離脱した佐野恵太は5月21日に一軍復帰し、新型コロナウイルスに感染した濵口遥大も間に合いそうだ。濵口は昨季の交流戦で3試合に登板し、2勝0敗、防御率0.90と抜群の安定感だっただけに復帰は心強い。交流戦は通算148勝213敗11分けで12球団最下位の勝率.410だが、19年は10勝7敗1分、昨年は9勝6敗3分と好成績を残している。投打がかみ合えば、球団初の交流戦Vの可能性は十分にある。
開幕9連敗を喫するなど上昇気流に乗れず、セ最下位に低迷する阪神は交流戦で挽回したい。昨年は惜しくも優勝を飾ったオリックスに及ばなかったが、11勝7敗の2位と奮闘した。注目されるのは佐藤輝だ。昨年は5月28日の西武戦(当時メットライフ)で長嶋茂雄(巨人)以来63年ぶりとなる新人の1試合3本塁打を記録するなど、交流戦で6本塁打を放ち新人最多記録を塗り替えた。パの投手たちも意地がある。2年目の今年はどんな名勝負が繰り広げられるか。矢野燿大監督はBIGBOSSと阪神でともにプレーしている。日本ハム戦は手の内を知り尽くしている互いの采配が注目される。
【文責:週刊ベースボール】