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【記録員コラム】「安打ってナンダ?」

 今年から始めました公式記録員コラムの第2回目です。前回のコラムでは、公式記録員とは何者かということについて紹介しました。そんな公式記録員の業務の中で最も重要な仕事は、打者が一塁に生きた場合に、それが安打によるものか、失策によるものなのかを決めること、と私は思っています。公式記録員の判断によって打者の打率や投手の防御率が変わってくるのはもちろんのこと、首位打者や最優秀防御率投手といったあらゆるタイトルに影響を及ぼします。さらには無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)のような非常に達成の難しい大記録も、公式記録員の判断一つで達成か不達成かが変わってくる可能性もあります。

 それでは一体、安打とは何でしょうか。皆さんなんとなくご存知かと思いますが、公認野球規則の条項9.05には、大きく分けて6つの場合に安打を記録すると記載されていますので、要約します。

  1. 打球が野手に触れる前に、フェア地域に落下するか、外野フェンスに当たるか越えたために、打者が一塁または先の塁に生きた場合。
  2. 打球が強すぎるか弱すぎたために、野手がその打球を処理する機会がなくて打者が一塁に生きた場合。
  3. 打球が不自然にバウンドしたために、野手の普通の守備では処理することができなくなって、打者が一塁に生きた場合。
  4. 野手に触れないで外野に達した打球によって、打者が一塁に生きることができ、しかもその打球は野手の普通の守備では処理できなかったと記録員が判断した場合。
  5. 野手に触れていないフェアボールが、走者、審判員の身体または着衣にフェア地域で触れた場合。
  6. 打球を扱った野手が、先行走者をアウトにしようとしたが成功せず、しかもその打球では一塁で打者走者をアウトにできなかったと記録員が判断した場合。

 大まかに言うと、以上の6つの場合に安打と記録します。ここまでで安打とは何か、ということについて書いてきましたが、実はこの安打に関して、今シーズン中に大きな記録が達成される可能性があります。それは、プロ野球81年の歴史の中で過去47人しか達成していない、通算2000安打です。しかもその達成候補選手が5人もいて、同一シーズンで5人の選手が2000安打を達成すれば、1983年シーズンに4人の選手が2000安打を達成したのを抜き、史上最多のこととなります。

1983年シーズン 通算2000安打達成選手
  • 藤田 平(神) 1983.5.3 15人目
  • 衣笠 祥雄(広) 1983.8.9 16人目
  • 福本 豊(急) 1983.9.1 17人目
  • 山崎 裕之(武) 1983.9.18 18人目
2017年シーズン 通算2000安打達成候補選手

※安打数は2017年4月24日現在

  • 荒木 雅博(中) 1975安打 あと25
  • 阿部 慎之助(巨) 1940安打 あと60
  • 福浦 和也(ロ) 1934安打 あと66
  • 内川 聖一(ソ) 1920安打 あと80
  • 鳥谷 敬(神) 1892安打 あと108

 2000安打という果てしない数字ですが、当然のことながら1本の安打の積み重ねであり、その数だけ公式記録員が安打の判断をしてきた、ということになります。節目が近づいてくるにつれて、その選手にはプロ野球ファンの皆さんからの期待と注目が高まるかと思いますが、実はその陰で公式記録員が判断を下しているということを少しでも知っていただけると幸いです。

 余談ですが、2015年6月11日、ロッテ対中日3回戦(QVCマリン)で、中日の和田一浩選手が2000安打を達成したのですが、その試合の記録を担当していたのは私でした。記念の安打は左翼線へのクリーンヒットで、試合中ですが少しだけホッとしたことを今でもよく覚えています。果たして2017年は何人の2000安打達成選手が誕生するのか、注目です。

【NPB公式記録員 伊藤亮】