【コラム】「成功したからといって偉ぶらない」阪神・メッセンジャーの哲学
エースの自覚にあふれている。8月10日のDeNA戦(横浜)に先発した阪神・メッセンジャー。万全な状態ではなく4度、得点圏に走者を背負ったが、冷静に対応して得点を許さなかった。7回6安打無失点で11勝目をマーク。今季、DeNA相手には6戦6勝、防御率は驚異の0.80だが、「今日の調子で7回無失点は二重丸」と金本知憲監督は絶賛。メッセンジャーも「(中継ぎに)休養を与えるという意味でも、長い回を投げることができて良かった。それが自分の仕事だからね」。頼もしい助っ人右腕が猛虎を引っ張っている。
今季、日本で9年目のシーズンを送っているメッセンジャーは4月に国内FA権の資格取得条件を満たした。球界最高助っ人への道を着々と歩んでいるが、日本で長く続けられた秘訣は「do not get comfortable」だという。
「『成功したからといって偉ぶらないこと』という解釈をしてほしい。特に若い選手たちには言えることだけど『調子に乗らない』というか、常に自分が成功者だと思わないことが重要。それは外国で生活していようが、そうでなかろうが一緒だと思う。もし、そういう気持ちが少しでもあれば、すぐに次の選手にポジションを奪われることになる」
さらに「keep an open-mind」(常に広い心を持つ)、「learn something」(常に学ぶ)という考え方も心に留めている。
「そういった精神状態でいることができれば、いろいろなことを、いろいろな人から学ぶことができるし、それが自分の成長につながると思っているんだ」
2010年、初めて来日する飛行機の中で「アメリカから日本へは長いフライトだから、本当に遠いところへプレーしに行くんだなと実感した」という。ただ、不安もあったが、楽しみのほうが大きかった。だからか、機内で一睡もすることなく、大阪の地に降り立った。
1年目、リリーフとして結果を残せず、二軍で先発へ転向したが、日本で成功したいという決意が体を突き動かした。
「1年だけで阪神から去ることだけはしたくなかった。だから、役割を変えた中で、それを成功に導けるように練習し続けたんだ。『僕はできる!』ということを証明したかった。とにかく成功することに集中していたよ」
時を経て、現在通算95勝をマーク。外国人投手では5人目となる通算100勝も目前に迫っている。
「日本の野球ファンの記憶と、NPBの記録に残る選手になりたい」
これからも偉ぶらずに、常に学びながら、野球に取り組んでいく。そして、「レジェンド」の座へと駆け上がる――。
【文責:週刊ベースボール】