【コラム】若手には負けない!交流戦Vに導く2年ぶりの勝利を挙げたソフトバンク・和田毅
大一番で2年ぶりの復活勝利を挙げた。6月23日の巨人戦(東京ドーム)。勝ったほうが交流戦優勝をつかむ一戦、ソフトバンクの先発は和田毅だった。「3回まで全力で行こうと思っていた」というベテラン左腕は初回に今季最速の145キロをマーク。4回に岡本和真にソロ本塁打を浴びたものの、5回を3安打1失点の好投を見せた。後続のリリーフ陣も巨人打線に反撃を許さずゼロで抑えて5対1。和田にとっては651日ぶりのうれしい勝利となったが、「今日は自分の白星より、チームの白星なので」と涙は見せず。交流戦で2年ぶり8度目の優勝(勝率1位)を導く投球ができたことに、何よりも喜びを感じていた。
2016年にメジャーリーグからソフトバンクに復帰した和田。同年、最多勝、勝率第一位に輝くも、ここ2年はケガに泣かされた。特に昨季は初めて違和感を覚えたという左肩の状態が最後まで上がらず、一軍登板はゼロ。昨季限りで五十嵐亮太(現ヤクルト)が退団し、チーム最年長になった。2月で38歳。杉内俊哉、村田修一といった「松坂世代」の同学年が次々とユニフォームを脱ぎ、自身も引き際を考えさせられることがあったが、世代の旗手・松坂大輔(中日)が右肩故障から昨季復活したことで「大輔が投げているのを見て勇気づけられた。肩さえ良くなれば、やれる自信はある」と力強く前を向いた。
キャンプから順調に調整を進め、5月29日のウエスタン・中日戦(タマスタ筑後)では今季7度目の二軍戦で最長の7回を92球で投げ切って、3安打無失点の好投。前の週、同じ相手に敵地で4被弾、5回6失点だったが、見事に修正。さらに再び松坂の姿に刺激を受けた。登板前日、同じ場所で、キャンプで故障離脱していた松坂が実戦復帰。変化球を主体に2回を完璧に抑える姿に感じ入った。
「ああいう投球は大事。僕も昔みたいにバンバン空振り、ファウルは取れないですから。勝手にだけど、背中を押してもらえました」。二軍から報告を受けた工藤公康監督は「投げた後の状態を確認して、問題がなければ考える」と一軍復帰に言及したが、6月5日に一軍選手登録。同日の中日戦(ヤフオクドーム)に先発し、本格復帰を果たした。
「ホークスは三軍を作って、『これだけはすごい』という一芸に秀でた選手を獲ってきますよね。千賀(滉大)であればフォーク。ズバ抜けたものが1つあって、それを磨いていけば当然プロレベルなわけで。それを見極めて、育てる力がすごいチーム。だから競争が厳しい。昨季も武田(翔太)が完封しても、次の試合で負けたら二軍。これは育成が成功して、先発も中継ぎもたくさん候補がいるから。そういえば外国人を除くと30代の投手は僕と中田(賢一)の2人だけですね」と自チームの戦力層の厚さに感嘆するが、負けるつもりはない。
「昨季投げられなかったことが恥ずかしいし、時間がかかって申し訳ない気持ち。今季はもう離脱しないように、最後までチームに貢献したいです」
味のあるピッチングを見せる背番号21が若鷹軍団を上昇気流に乗せていく。
【文責:週刊ベースボール】