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【記録員コラム】4割の壁

 新型コロナウイルスの影響で延期されていたプロ野球公式戦ですが、ようやく開幕することが出来ました。しばらくは無観客試合でモニターを通じた観戦になってしまいますが、ファンのみなさまのご声援をよろしくお願いします。

 開幕が遅れた影響でオールスター・ゲームやクライマックスシリーズは中止になり(パ・リーグのみ変則的なCSを行いますが)、今シーズンの公式戦は1チーム120試合となりました。規定打席(120×3.1=372打席)規定投球回(試合数=120イニング)はルールブックに定められている通りになりますが、投手の勝率第一位の規定(13勝以上)については「10勝以上」と変更されました。また、出場選手登録人数とベンチ入り人数の拡大、延長10回打ち切りの特別ルールなど、試合の運用面で変更点があります。

 このようないくつかの変更点によって、当然記録面にも影響があると考えられます。その中の一つに「試合数が減ることによって4割打者の可能性が高まるのではないか」というものがあります。そこで今回は、過去の数字からその可能性を探ってみました。

 2リーグ制となった1950年以降で、シーズンの規定打席到達時に打率4割をマークしたのは1989年のW.クロマティ(巨人)選手しかいません。規定打席403(130試合制)に到達した8月20日終了時に96試合404打席349打数140安打、打率.401。(8月24日対ヤクルト20回戦(神宮)の第3打席まで、シーズン411打席で打率4割をマーク)ここで残りの試合を欠場すれば「4割打者」だったのですが、チームが優勝を争っていたこともあり、当然のごとくそのまま試合に出場し続けて、最終的には打率.378で首位打者となりました。

 まずそのクロマティ選手ですが、372打席目は8月11日対中日19回戦(ナゴヤ)の第1打席で、安打を打ち(89試合目)321打数129安打、打率.402。この時点でも打率4割をマークしています。

 他の主な選手を調べてみました。

1950年 藤村 富美男(阪神)
7月19日終了時、73試合328打席275打数110安打、打率.400を最後に4割を切る。
8月12日対西日本9回戦(長岡)の第4打席で372打席到達。
(83試合目)312打数121安打、打率.388(この時点が最高)。

1964年 広瀬 叔功(南海)
7月2日終了時、89試合365打席322打数129安打、打率.401。
この年はケガでシーズン途中からしばらくスタメンを外れて代走などの出場になっていて、ここから7打席(6打数0安打1死球)に約1ヶ月かかった。
8月6日終了時、108試合372打席328打数129安打、打率.393。
その後、8月16日対西鉄27回戦(平和台)の第1打席・安打で(115試合目)386打席342打数135安打、打率.395が最高。

1970年 張本 勲(東映)
打率4割はマークできなかったが、9月15日終了時に106試合455打席386打数153安打、打率.396。
翌16日対ロッテ21回戦(後楽園)第2打席・二塁打で(107試合目)457打席387打数154安打、打率.398まで上げたのが最高。

1986年 R.バース(阪神)
8月12日終了時に85試合368打席318打数127安打、打率.399。
372打席まで4打数2安打もしくは2打数1安打2四死球で4割だったが、翌日13日の対巨人19回戦(後楽園)槙原寛己投手に4打数ノーヒットに抑えられ86試合372打席322打数127安打、打率.394。
その後、8月27日対ヤクルト19回戦(甲子園)の第2打席・安打で(96試合目)412打席354打数141安打、打率.398が最高。

1994年 イチロー(オリックス)
7月9日終了時の69試合325打席285打数114安打、打率.400を最後に4割を切る。
372打席以上では、8月10日対日本ハム22回戦(高松)第3打席・安打で(90試合目)422打席374打数149安打、打率.398が最高。

2000年 イチロー(オリックス)
8月3日に対ロッテ17回戦(千葉マリン)で3安打して83試合370打席316打数126安打、打率.399。
翌4日対西武16回戦(神戸)の第1打席、松坂大輔投手から右中間二塁打で371打席317打数127安打、打率.401と4割に乗せるが、第2打席・一ゴロで372打席到達して318打数127安打、打率.399。
この日は最終的に4打数1安打で.320打数127安打、打率.397とする。
5日対西武17回戦(神戸)で3安打し再び380打席326打数130安打、打率.399に上げるも翌日ノーヒット。

 以上、2000年のイチロー選手が120試合での規定打席372に1足りない371打席で4割をマークしていましたが、120試合(372打席以上)で過去の数字を振り返っても打率4割を記録したのはクロマティ選手だけでした。

 一部メディアで、今シーズンの記録を「注釈付き」で扱うというような話が取り上げられましたが、少なくとも「4割打者」については、仮に今シーズン誕生したとしても十分称賛に値するということは、過去の数字から検証したこの結果で証明できたと言っても過言ではないでしょう。
 また、前提条件が異なるシーズンの記録をこのような形で検証する意味があるのか?と疑問に持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、実際に調べてみるとなかなか興味深い数字が現れたのではないでしょうか。
 野球の記録はこうした楽しみ方もあるということを感じていただけたらと思います。

【NPB公式記録員 藤原宏之】