【日本シリーズ展望】前年最下位から優勝球団が対決するのは史上初。強力先発陣のオリックスか、破壊力抜群の打線擁するヤクルトか
前年最下位でリーグ優勝した球団同士が激突する史上初の日本シリーズ。オリックス、ヤクルトはともにクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージも無敗で勝ち抜き、最高の状態で決戦を迎える。
25年ぶりにパ・リーグの頂点に立ったオリックスは強力な先発陣が大きな強みだ。エースの山本由伸が18勝5敗、防御率1.39で最多勝、最優秀防御率、最高勝率(.783)、最多奪三振(206)と投手タイトルを総ナメに。高卒2年目左腕・宮城大弥も13勝4敗、防御率2.51と大ブレークした。計31勝を挙げた「ダブルエース」が勝てば、日本シリーズの主導権をつかめる。さらに投手陣を長年支えてきた山岡泰輔が日本シリーズに向けた全体練習に15日から合流。今季は9月に右ヒジのクリーニング手術を受けたが、日本一を目指す舞台に間に合った。救援要員としてベンチに入る可能性が高く、ナインの精神的支柱としても心強い存在だ。
打線も能力の高い選手たちがそろう。中嶋聡監督が我慢強く起用した高卒2年目の紅林弘太郎が遊撃のレギュラーに定着し、三塁に固定した宗佑磨は二番で潤滑油に。二塁から中堅にコンバートされた福田周平もリードオフマンとしてチャンスメークする。そして、二軍監督時代から潜在能力を評価していた杉本裕太郎が打率.301、32本塁打、83打点の大活躍で自身初の本塁打王を獲得。「育成と勝利」を両立した中嶋監督の功績は大きい。今季打率.339、21本塁打、72打点で2年連続首位打者を獲得した吉田正尚の存在も心強い。シーズン終盤に右尺骨骨折で戦線離脱したが、CSから復帰。吉田正がいるのといないのでは相手に与える迫力がまったく違う。
中嶋監督はオリックスの現役時代、阪神淡路大震災が起きた95年にリーグ制覇を飾ったが、日本シリーズでヤクルトに1勝4敗で敗れている。「負けましたので、何とかやり返したいと思います。(日本シリーズの)スタートはここ(京セラドーム大阪)ですが、まずはここで勝って、帰ってこられないようにしたいですけど、神戸で決めたい気持ちもあります」と熱い。
2年連続最下位からリーグ制覇を成し遂げたヤクルトはリーグトップの625得点を叩き出した強力打線で勝機をつかみたい。一番から今季ブレークした塩見泰隆、ベテランの青木宣親、主将の山田哲人、四番は打率.278、39本塁打、112打点で自身初の本塁打王を獲得した村上宗隆と強打者たちがズラリ。五番以降もオスナ、サンタナの両外国人に、「つなぎ役」として貢献度が高い中村悠平と相手バッテリーは息が抜けない。今季82打数30安打、打率.366、1本塁打、18打点と驚異の代打成績を誇る川端慎吾も控えている。どこからでも得点が取れる切れ目のない打線でビッグイニングを作りたい。
2年連続リーグワーストの防御率だった課題の投手陣は、就任2年目の高津臣吾監督の手腕で見事に立て直された。小川泰弘、石川雅規の2人に頼り切っていた先発陣は若手が台頭した。高卒2年目の奥川恭伸は今季9勝4敗、防御率3.26。巨人と激突したCSファイナルステージでは初戦の先発を託され、“プロ初完投初完封”と期待以上の快投で起用に応えた。安定感が増した高橋奎二も信頼を勝ち取り、原樹理が復活したのも明るい材料だ。6勝を挙げたサイスニードは家族の事情で帰国してしまったが高梨裕稔、金久保優斗も準備万全で、誰を先発で起用するか迷うほど厚みが増している。
救援陣は7勝1敗28ホールドと大活躍した今野龍太がシーズン終盤に痛打を浴びる場面が目立ったのは気がかりだが、日本新記録のシーズン50ホールドをマークした清水昇、本来の球威を取り戻した石山泰稚から守護神・マクガフにつなぐ「勝利の方程式」が確立されている。
高津監督は「他の5球団の思いを背負ってセ・リーグを代表して日本一になりたいと思います」と誓う。ワールド・シリーズやWBCで日本代表のユニフォームを着るなど経験豊富な青木は「ワールド・シリーズや国際大会は独特の緊張感がありますが、(試合を)これとこれはちょっと違うとは思いたくない。大きな試合で力を発揮できるようにと考えています」と語っている。泰然自若の精神で20年ぶりの日本一を狙う。
【文責:週刊ベースボール】