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【コラム】ロッテ・佐々木朗希の完全試合を演出した“高卒新人”松川虎生の大胆かつ繊細なリード

 異次元のピッチングが全国の野球ファンを魅了した。4月10日のオリックス戦(ZOZOマリン)に先発したロッテ・佐々木朗希。立ち上がりから160キロ超を計測するストレートが低めに伸びた。フォークも150キロに迫り、打者が対応できない。初回二死から吉田正尚を空振り三振に仕留めると“奪三振ショー”が開演した。5回まで圧巻の13者連続三振で1957年に阪急・梶本隆夫、58年に東映・土橋正幸が樹立した9者連続の日本記録を更新。それどころか1人の走者も許さない完全投球を続ける。

 8回を終わって18奪三振。完全試合に加えて1試合最多奪三振記録にもあと1と迫る快投だ。9回は4球で2つの内野ゴロに仕留めて二死に。27人目の打者は代打で登場した杉本裕太郎だった。昨季の本塁打王に対して2球続けてフォークを投じて2ストライク。最後もフォークで空振り三振に仕留め、史上16人目の完全試合、そして95年にオリックス・野田浩司に並ぶ1試合最多タイの19奪三振を同時に成し遂げた。

 空前絶後の快挙。これをアシストした女房役が高卒1年目の松川虎生だったという事実を忘れてはいけない。今季、市和歌山高からドラフト1位でロッテに入団した18歳。3月25日の楽天戦(楽天生命パーク)で高卒新人としては史上3人目となる開幕戦の先発マスクをかぶるとチームを4対0の快勝に導いた。先発で7回3安打無失点の好投を見せた石川歩がヒーローインタビューで「調子自体はそんなに良くなかったですけど、松川にしっかりリードしてもらって抑えられたと思います。高校生、高卒新人じゃないみたいでした」と絶賛。完全試合後の佐々木朗も「松川がいいリードしてくれたので、しっかり、そこに要求に応えながら投げることができたと思います」と絶大な信頼を口にしていた。

 二塁送球は1秒8台と強肩でコントロールも正確。キャッチング、ブロッキング能力も高いから佐々木朗は右腕を思い切り振ってフォークを投げることができる。配球も大胆かつ繊細だ。4回二死から吉田正を打席に迎えた場面ではこの試合、初めて初球にカーブを選択。見逃しストライクを奪うと続けてカーブを要求し、空振りを誘って追い込んだ。最後はフォークで空振り三振に切って取り、日本記録となる10者連続三振をマークした。

 さらに7回二死から再び吉田正と対戦した場面でも好リードを見せた。3球ストレートを続け2ボール1ストライクとなったが、4球目にはフォークで空振りを奪って2ボール2ストライク。この試合、15三振をフォークで奪っている。当然、ウイニングショットは落ちるボールかと思われたが、内角低めへの163キロのストレートで見逃し三振に仕留めた。2年連続首位打者に輝いている吉田正クラスの強打者になれば3度目の対決だと目が慣れて対応してくる。ストレート勝負には怖さが伴うところだ。だが、精度の高いフォークで勝負するのが常道のところをストレートで裏をかいた配球。完全試合が続いている中で、強心臓を発揮した。

 「ワクワクのほうが大きかったです」と完全試合にもプレッシャーとは無縁だった松川。2人合わせて38歳と若さあふれるバッテリー。佐々木朗と松川のコンビが今後も数々の伝説を築いていくのは間違いない。

【文責:週刊ベースボール】