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【コラム】中日・大野雄大が“完全未遂”の好投で2勝目、優勝への思いが満ちあふれるエース左腕

 「行かせてください」

 その言葉にはエースの気概があふれていた。5月6日の阪神戦(バンテリンドーム)、中日先発・大野雄大は立ち上がりから素晴らしい投球を見せる。最速147キロのストレートにツーシーム、スライダー、フォークと変化球が冴え渡り、阪神打線を封じ込む。9回まで一人のランナーも許さない完全投球。しかし、味方打線が相手先発・青柳晃洋の丁寧な投球の前に2安打無得点に抑えられ0対0で延長戦へ。108球を投じていた大野雄は首脳陣から降板を命じられ一度は受け入れたが、「あいつなら『絶対に行く』と言うと思ったので」。右のエースとして大野雄とともに先発陣を牽引する柳裕也の顔が頭に浮かんだ。

 登板を直訴して10回のマウンドに上がった大野雄。近本光司を一ゴロ、中野拓夢は右飛に打ち取ったが、30人目の打者、佐藤輝明に二塁打を浴びて大記録の夢は消え去ってしまった。だが、これで緊張感が途切れることはない。続く大山悠輔を二飛に打ち取りピンチを切り抜けると、その裏、石川昂弥のサヨナラ打が飛び出した。今季2勝目を手にした大野雄だったが、延長戦で完全試合を逃したのは史上2度目。2005年8月27日の楽天戦で西武の西口文也が10回無死で沖原佳典に安打を許して以来だった。

 「(完全試合で)延長10回まで行ける投手もなかなかいない。自分を褒めてあげたいです。でも、最後に昂弥が決めてくれてホンマにすべてが報われたというか。僕の記録なんてどうでもいいので、勝って良かったです」

 完全試合未遂よりも勝利を手繰り寄せたことに喜びを感じた。それはドラゴンズで頂点に立ちたい思いが満ちあふれているからだ。2011年ドラフト1位で中日入団。だが、ドラフト時に左肩を故障しており、一軍登板は1年目が1試合、2年目が9試合に終わる。3年目の13年から3年連続2ケタ勝利。19、20年には2年連続最優秀防御率に輝き、20年は沢村賞も獲得したが、チームは大野雄が入団1年目以降、優勝からは遠ざかっていた。

 「やっぱり、チームの順位は大事と言いますか、やりがいです。沢村賞をいただいたときも、その結果が優勝につながっていたら、もっとハッピーだったはず。チームが勝つと、心の底からうれしいんです。負けたら『なんでやねん』と。本当にファンの一人のように、投げていない試合でも一喜一憂しています」

 20年オフにはFA移籍も噂されたが残留を決断した。やはり「ドラゴンズで優勝」を強く願ったからだ。

 「ドラゴンズで勝ちたいという思いが一番でした。このチームに残り、このメンバーとペナントを獲りたいと本気で思っています。ピッチャーは何とかゲームをつくり、野手は打てなくても何とか1点を取っていく。それが入団したころのドラゴンズの野球の形。それを体現していくことが大事だと思います」

 悲願を達成するためにも、これからも貪欲に腕を振る。チームに勝利をもたらすピッチングをすることだけを大野雄は考えている。

【文責:週刊ベースボール】