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【記録員コラム】ノーヒットノーランと公式記録員の不思議な縁

 2022年5月11日、ソフトバンク対西武7回戦(PayPayドーム)で、ソフトバンクの東浜巨投手がプロ野球84人目、95度目の無安打無得点試合、いわゆるノーヒットノーランを達成しました。私はこの試合、データ入力を行うサブの記録員として目の前で見ていました。ノーヒットノーランというと、守っている野手にプレッシャーがかかるということは想像に難くないと思いますが、公式記録員にとっての率直な心境を紹介したいと思います。

 まず前置きとして、現在NPBの公式記録員は22人いて、一軍戦はスコアを書きヒットorエラーのジャッジをするメインの記録員と、その隣でデータ入力を担当するサブの記録員の2人体制で、二軍戦はメインの記録員1人体制で試合を担当しています。

 冒頭で申し上げた通り、東浜投手がノーヒットノーランを達成した試合では私はサブの記録員を担っていました。一軍戦、二軍戦を合わせると数年に1度はノーヒットノーランが達成されているのですが、実は私、目の前でノーヒットノーランを見るのは公式記録員15年目で初めてのことでした。

 今まで私が担当した試合で7回や8回までノーヒットノーランという試合は何度かあったのですが、その時は5回あたりから意識し始め、早く判定に迷わないようなクリーンヒットが出て欲しいと思っていたのが公式記録員としての正直な心境でした。なぜなら、もしノーヒットノーラン継続中に判定に悩ましいプレイが出れば、公式記録員のジャッジによって大記録達成へ継続となるか否かが決まるからです。

 しかしながら東浜投手が達成した試合では、私はサブの記録員だったということもありますが、東浜投手が全く危なげのない投球を続けていて、さほどプレッシャーを感じることなく試合が終わったという印象でした。

 ただ唯一、この試合の最後の打者だった西武の金子侑司選手の投手前への打球を東浜投手が弾いた時は思わず「アッ」と声が出てしまいそうになりましたが、打球は二塁手の前に転がって三森大貴選手がさばき、大記録達成となりました。後になって、もし東浜投手が野手のいない方向に弾いていたら、と考えると冷や汗ものでした。

 公式記録員とノーヒットノーランには不思議な縁があるもので、歴代の公式記録員の中で長いキャリアがあっても一度もノーヒットノーランを見ずに引退を迎えた公式記録員もいれば、まだキャリアが浅いにも関わらず何度も担当したという公式記録員もいます。

 私はメインの記録員としてはまだノーヒットノーランを見たことがないので、キャリアの中で一度は担当してみたいと思う一方、実際に試合が始まれば、早い回にクリーンヒットが出るとまずはそこで一安心となります。

 ましてや、4月10日にロッテの佐々木朗希投手が達成した完全試合ともなれば相当なプレッシャーを感じることになると想像できますが、NPBのスコアシートには「記録者署名」という欄があり、長いプロ野球の歴史の中で数十年に一度あるかないかの大記録に自分の名前が添えられるのはとても名誉なことになります。

 2022年シーズンは前述の東浜巨投手、佐々木朗希投手の他にも、5月6日には中日の大野雄大投手が10回二死まで完全投球ということもあり、例年にないペースでそのような試合が見受けられます。この流れで次は私が担当する試合か、と意気込む一方、球場の記録席に座って1本目にクリーンヒットが出るとホッとする今日この頃です。

 「記録を作るのは選手、記録を証明するのは公式記録員」との気持ちを持って今後も精進していきます。

【NPB公式記録員 伊藤亮】