【コラム】プロ野球史上初の5打席連続本塁打、三冠王も視野に入れるヤクルト・村上宗隆の豪打
ヤクルトの背番号55のバットが猛威を振るった。7月31日の阪神戦(甲子園)に3打席連続本塁打で全4打点を挙げ、チームの逆転勝利に貢献した村上宗隆。続く8月2日の中日戦(神宮)でもアーチを描き続けた。初回の第1打席、二死から打席に立つとカウント2-1から柳裕也が投じた5球目だ。真ん中カーブをフルスイングでとらえた当たりは右翼席上段へ吸い込まれる38号ソロに。プロ野球史上14人目となる4打席連続本塁打は「今年イチ完璧なホームランだった」と自画自賛する一撃だった。
さらに3回一死一塁で迎えた第2打席だ。フルカウントからの6球目、柳の外角チェンジアップに体勢を崩されながらも最後は片手一本でバットを振り抜き左中間席へ。昨季マークした自己最多に並ぶ39号2ランは、過去誰も届かなかったプロ野球新記録の5打席連続本塁打となった。「(新記録は)知りませんでした。5打席連続で打てたらいいな、ぐらいの気持ちでした。(チームメートの)皆さんも喜んでくれて、僕もうれしい気持ちになりました」と村上。6回の第3打席は左翼線への二塁打で記録は途絶えたが、「またいつか6打席連発に挑戦したい気持ちはあります」と22歳のスラッガーは早くも記録更新への意欲を見せた。
高卒5年目で球界トップクラスのスラッガーに成長したと言えるだろう。今季開幕前にはバットを構えた位置をやや下げたフォームに挑戦するなど試行錯誤をする毎日。シーズン中にはミズノ社製のバットの形状を変えた。「いろいろ挑戦して、最後にいい結果で終われるように工夫しながらやっている。最終的には自分がいい結果を残せるような準備をしているだけです」と変化を恐れずに進化することを追求。パワー、スイングスピード、技術、配球の読み、選球眼、すべての領域で群を抜く打撃を手に入れた。
5打席連続本塁打の内訳も左翼、右翼、左翼、右翼、左中間。内角球は引っ張り、外角球は流してスタンドインさせる。穴のない打撃に期待が掛かるのは日本人では6人目のシーズン50本塁打超えだ。これまで記録しているのは1950年の小鶴誠(松竹)、63年の野村克也(南海)、64、73、77年の王貞治(巨人)、85、86年の落合博満(ロッテ)、2002年の松井秀喜(巨人)とレジェンドのみだ。そして、バレンティン(ヤクルト)が13年に樹立したシーズン60本塁打超えも視野に入る。現在、56本塁打ペースだけに、記録更新の可能性は十分にあるだろう。
史上8人目の三冠王も射程圏内だ。8月8日現在、打率.318、39本塁打、98打点をマークしているが本塁打、打点はともに2位の大山悠輔(阪神)に17本差、27打点差とほぼ当確。打率も1位・佐野恵太(DeNA)に4厘差の3位につけており、令和初、史上最年少のトリプルクラウンは現実味を帯びている。
今年1月には「すべてのタイトルを獲れるなら獲りたい」と堂々と宣言したが、もちろん何よりも主砲としてチームの勝利を第一に考えている。「自分が打って勝つ試合もありますし、打てずに勝てる試合もありますし、それが野球、チームスポーツなので、勝てればいいかな、と。それだけです」。自らのバットで球団初の2年連続日本一に導き、三冠王も獲得――。ツバメの四番のバットから目が離せない。
【文責:週刊ベースボール】