【コラム】史上初の“育成出身左腕”開幕戦勝利、ソフトバンク・大関友久「すごいものを見せたい」
堂々と左腕を振った。3月31日、ロッテとの開幕戦(PayPayドーム)。ソフトバンクの先発マウンドに上がったのは大関友久だった。初回に1三振、2回に2三振を奪って三者凡退と抜群の立ち上がりを見せると、3回は3者連続三振。140キロ台後半の直球とカットボール、チェンジアップ、スライダー、フォーク、シュートを巧みに織り交ぜロッテ打線を抑え込んでいく。6回一死までパーフェクトピッチング。7回に無死一、二塁のピンチを招いたが井上晴哉をフォークで遊ゴロ併殺打に仕留めた。7回2安打無失点と上々の投球内容。育成出身の左腕では史上初の開幕戦勝利を飾った。
「1球目を投げるときにすごくワクワクしていたので、いい状態で投げられました。大事な初戦なので、絶対勝つと思ってマウンドに上がりました。チームが勝てて良かったです」
お立ち台で満面の笑みを浮かべたが、喜びはひとしおだっただろう。2020年、仙台大から育成ドラフト2位でソフトバンクに入団した大関。2年目の5月下旬に支配下に昇格すると、4年目の昨季、開幕から先発ローテーションに。前半戦だけで6勝を挙げたが、思わぬ病魔が左腕を襲った。8月に精巣がんの疑いで腫瘍摘出手術。だが、大関の思考は前向きだ。シーズン終盤に復帰したが、秋季キャンプが終わり、一人で自主トレを重ねていた冬、「開幕投手」の4文字がすでに自身の頭の中にあったという。
「いい成績を残す、いいピッチングをするというのは、チームの柱として大事な要素の一つだと思います。そういう意味を込めて、ですね。もちろん、まだそこまで行けてないんですけど、チームを引っ張っていくような存在、まずはそこを目指す中で『開幕投手を』という思いがありました」
さらに、目指すべきところがある。
「開幕投手を一つ視野に入れた中で意識してきたのは『圧倒的なピッチングをしたい』というところです。2021年のシーズン途中に支配下になって、昨年は先発ローテで回って、と順調に来ていたので、ここからは段階を踏んでというよりは、本領を発揮するときだな、と。本当の意味でのスタートの年。自分のやりたいことの始まる年だなという気持ちでした」
“やりたいこと”というのを言葉で表現するのは難しいが「すごいものを見せたい」という気持ちが強いという。例えばファンが見たこともないような何か――。
「やっぱり見ている側の視点からすると、試合に勝つというのは当たり前になってくる。そのために、その上では実力も絶対に必要ですし、結果も絶対に必要だと思います。進化する姿も必要だと思うんですよね。それらを合わせたものを見せられればなと思っていますね」
開幕戦は、まさに“すごいもの”を見せてくれそうな予感が漂う内容だった。今季の個人的な目標は18勝。勝利を積み重ねながら、大関はファンの心に焼き付くピッチングをマウンドで表現していく。
【文責:週刊ベースボール】