【コラム】チーム“エスコン第1号”を放った日本ハム・野村佑希、四番を守り続けて「成長を実感する」シーズンに――。
“第1号”はやはり四番のバットから生まれた。4月14日の西武戦(エスコンF)、0対0で迎えた3回、日本ハムの攻撃だ。二死一、三塁のチャンスで打席に入ったのは四番・野村佑希。1ボールからの2球目、松本航が投じた内角高め143キロ直球を振り抜くと打球は左翼のブルペンに飛び込む先制&決勝3ランとなった。新球場での開幕3連戦では楽天打線から3本のアーチが生まれていたが、日本ハムはゼロ。新球場4試合目で待望のチーム“エスコン第1号”となった。
開幕前にメモリアル弾を公約していたが、それを実現。「1本目は一人しかいない。四番として打てたことは良かったです」と野村は口にしたが、続けて「打てないと試合に出られません。状態をもっと上げていきたい」と前を見据えた。
新庄剛志監督就任1年目の昨季、高卒4年目のスラッガー・野村に大きな期待がかかった。しかし、不完全燃焼に終わる。2月の春季キャンプで左足首を捻挫し、開幕二軍スタートに。4月に復帰も、5月17日のオリックス戦(ほっと神戸)で死球が顔面を直撃して鼻骨を骨折。その後も試合に出続けたが、8月に左腹斜筋の肉離れで戦列を1カ月離れた。不可抗力の部分もあったが昨年は93試合の出場で打率.279、6本塁打、36打点に終わった。
ただ、決して後ろ向きにはなっていない。昨年に関しては「いろいろな経験をすることができたと思います」と振り返る。さらに「四番を含めて多くの打順を経験しましたし、ケガを含めてうまくいかないことはたくさんあったんですけど、その中でいろいろ試しながらできました。四番としてたくさん出る中で、調子が悪い中でも最低限の仕事をするという打席が着実に増えていったかなと思います」と成長を実感している部分もある。
あらゆる経験を結実させるのが2023年になる。今季はキャンプから基本を見直し、さらに土台となる体を大きくしてパワーアップするためにトレーニングに励んだ。すべては四番の座を守り続けるという目標を達成するために――。
「それができれば、成績を含めて自分の成長にすごくつながると思っています。“プライドを持って”じゃないですけど、最後まで乗り切っていけるように頑張りたいです。具体的に誰かあこがれているバッターがいるわけではないので、自分らしい成績を残すことができればなと思います。どれくらい打てばいいかというのは、ほかのチームの四番バッターを見ていればだいたいの数字は皆さんも分かっていると思います。まずはそういうところに行けるように頑張りたいです」
「優勝しか目指さない」と新庄監督が宣言して臨んだ今季。日本ハムは開幕14試合を消化した時点で4勝10敗の最下位と苦しい戦いが続く。しかし、清宮幸太郎、野村、万波中正で組む若きクリーンアップは魅力十分だ。
「鎌ケ谷から一緒にやってきているので、刺激になるというか、みんなでもっと上まで登っていきたいなというのはあります」
新球場で熱い声援を送るファンを笑顔にするために――。その中心には背番号5がいる。
【文責:週刊ベースボール】