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【コラム】オリックス相手に6年ぶり勝利の3ラン、開幕から広島・秋山翔吾が安打を量産する理由

 6年ぶりの勝利を呼んだのは安打製造機だった。5月30日から「日本生命セ・パ交流戦」が開幕。広島は最初のカードでオリックスと戦うため敵地・京セラD大阪に乗り込んだ。オリックスには2017年に3連勝。だが翌18年からは勝てず、4シーズン連続(20年は新型コロナ禍の影響で交流戦開催なし)で0勝3敗と苦杯をなめ続けている相手だった。今年こそは勝利をつかむ――。広島ナインは意気込んで初戦を迎えたが、いきなり0対4と完封負けを喫してしまう。これで13連敗。幸先の悪いスタートなったが翌31日、ベテランのバットが火を噴いた。

 0対0で迎えた7回、一死一、二塁で打席に立ったのは秋山翔吾。それまでの3打席、マスクをかぶっていた西武時代の同僚・森友哉の配球の前に三邪飛、空振り三振、四球と安打は生まれなかったが、「まったく気にしていなかった」。集中力を高めると、1ストライクから黒木優太の142キロ内角直球に鋭く反応。打球は右翼席に飛び込む3号3ランに。「すごくいい場面で回ってきて、いいところで打てました」と自画自賛する一撃で3対1の勝利に貢献した。「(オリックスは)分が悪い、鬼門だと言われていましたけど、それは前年までの話だと思って僕はやっています」。前向きなメンタルを持つベテランがチームをトンネルから脱出させた。

 西武からメジャー・リーグ挑戦を経て、昨年6月に広島に加入。移籍1年目は2度の離脱などもあり、44試合で打率.265と物足りない成績に終わった。「昨年、あれだけ広島の人たちに歓迎していただいて入団して、『これぐらいか』と思われるのもすごいキツかった」。オフは自主トレからしっかり体を追い込んだ。しかし、オープン戦は15試合で打率.239と思うような結果が出なかった。そのとき、新井貴浩監督からかけられた言葉が大きかったという。

 「練習で新井さんから『(以前は)打席の中で、なんかダンスをしているみたいだった。どこのタイミングで投げても打てるような間合いで待っていたよね』と言われたんです。僕が西武時代、交流戦で対面したときなんて5年以上も前なんですけど、そのときの印象をそういうふうに話してくださって。その言葉はすごく刺さりました」。

 それまでは打撃がコマ送りで止まっているような感じだった。それが「ダンス」という言葉で、流れるように一連の動きがつながっていく感覚が呼び起された。

 「構えのとき、ピッチャーに(タイミングを)合わせるときも、ゆっくり動き“続けておく”感覚というのは、新井さんから言葉をもらって、ちょっとハッとしました。その考え方はしていなかったな、って」

 それが一つのきっかけとなり、今季は開幕から高打率をマーク。5月2日時点では打率.408と驚異の4割超えを果たしていた。その後も猛打は衰えず、6月5日時点で70安打は12球団トップ。シーズン192.5安打ペースだが、自身2度目の200安打超えも十分期待できる数字だ。

 今年4月で35歳を迎えたが、年齢にあらがう気持ちは強い。全試合フルイニング出場を果たすためにも日常から意識を高く過ごす。

 「いい意味でずっと気を張りながら。どこかで絶対にしんどさが出てくると思いますが、そこでやれる体力であり、気力でありを整えておけるような日常の取り組み、準備しかない」

 5年ぶりの優勝をもたらすためにも、秋山はグラウンドに立ち続ける。

【文責:週刊ベースボール】