【コラム】プロ初完投を完封で飾った中日・髙橋宏斗、世界一戦士の一員となったことで増した自覚
最後まで力強く右腕を振り抜いた。6月13日の千葉ロッテ戦(バンテリンドーム)、中日先発の髙橋宏斗は7点の援護を背に9回125球を投げ、5安打、9奪三振で無失点。プロ初完投を初完封で飾った。今季初登板となった4月6日のヤクルト戦(バンテリンドーム)以来、68日ぶりの2勝目を手に入れたが、最大のピンチは3点リードの6回だった。連続四球で無死一、二塁。しかし、ここで髙橋宏の闘争本能に火がついた。中村奨吾に対しては1ボールから5球連続150キロ超のストレートを投じて、二ゴロ併殺打。さらに続く山口航輝に対しても圧巻の投球を見せた。初球から155キロ、156キロ、155キロのストレートを投じて見逃し三振に。3球目は糸を引くように寸分違わず外角低めへ投げ込まれた、惚れ惚れするストレートだった。
「1勝目を挙げてからここまで勝ちがつかず自分自身、すごく苦しかったですし、チームにいっぱい迷惑かけてきた。いい投球ができて良かったです。まだ2勝6敗の投手。ここから巻き返せると思うので、いい流れに乗れるようにしたい」
弱冠20歳ながら今春のWBCで世界一戦士の一員となった。決勝のアメリカ戦では3対1とリードしている5回にマウンドへ。これまでに味わったことのない緊張感。足の震えはあったが、世界中の野球ファンが注目している大舞台で投げられる喜びも感じていた。先頭のベッツ(ドジャース)に三塁内野安打を打たれたが、トラウト(エンゼルス)、ゴールドシュミット(カージナルス)は連続三振。アレナド(カージナルス)に左前打を浴び、二死一、二塁とされたが、最後はシュワーバー(フィリーズ)を中飛に打ち取った。
「打ち上げてくれた瞬間はホッとしました。本当にホッと(笑)。世界一はこれ以上にない喜びというか、感動でした。本当に全員でつかみ取った世界一だったので、心からうれしかったです」
決勝戦前のミーティングで大谷翔平(エンゼルス)が「(アメリカ代表を)あこがれるのをやめましょう」とナインを鼓舞したことが話題となったが、髙橋宏は「感動して泣きそうになっていました(笑)」と言う。
「アメリカに対して向かっていく気持ち、正々堂々と戦って勝つんだという気持ちに全員がなれたと思います。大谷さん、そしてダルビッシュさん(有、パドレス)の2人がチームに与える影響は本当に半端なかったです」
ダルビッシュから教わったことは宝物となっている。
「僕はダルビッシュさんにはツーシームの握り、投げ方、意識の仕方などを教わりましたけど、一番驚いたのは意識の高さ。何をするにしても高い意識を持って動いているし、取り組んでいるので、それは本当にすごいなってずっと感じていました。キャッチボールを見ているだけで勉強になりましたし、ダルビッシュさんがいたからこそチームは1つにまとまったし、世界一になれたと思います」
侍ジャパンの一員として世界の頂点に立ったことで、自覚は増した。
「周りからの期待というか、求められているものが変わってきているとは感じています。でも、それは自分にとってもプラスになることだと思いますし、その期待に応えられるだけの力をつけていきたいです」
6月23日からペナントレースが再開するが、背番号19は下位に沈むチームを浮上させるピッチングを貫いていく。
【文責:週刊ベースボール】