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【記録員コラム】ベースは誰のもの?

 今シーズンもマイナビオールスターゲーム2023が大盛況のうちに終わり、いよいよ順位争いも激しくなる後半戦へと向かっていきます。公式記録員として各球場を訪れますが、ここ数年には見られなかった盛り上がりを感じられること、うれしく思います。

 さて、今回は野球プレーヤーにとって覚えておくと役に立つかもしれない規則を紹介したいと思います。試合においてよくある2つのケースから話を進めます。

<ケース1>

 無死二、三塁で打者の打ったボールは投手へのゴロ
→投手が本塁へ送球し、三塁走者は三塁と本塁の間に挟まれ、その間に二塁走者は三塁進塁
→捕手は三塁まで追いかけて行き、三塁上で三塁走者と二塁走者の両方に触球
→審判員は三塁走者にセーフ、二塁走者にアウトを宣告

 このケース、両走者共に塁に触れている状態で触球されていますが、二塁走者がアウトとなります。先に三塁に触れたのは二塁走者ですが、どうしてでしょうか。その理由となる野球規則は下記の通りです。

5.06 走者 (a)塁の占有 (抜粋)

(2) 2人の走者が同時に一つの塁を占有することは許されない。ボールインプレイの際、2人の走者が同一の塁に触れているときは、その塁を占有する権利は前位の走者に与えられているから、後位の走者はその塁に触れていても触球されればアウトとなる。

 上記により、三塁を占有する権利は前位の走者である三塁走者に与えられている為、後位の走者である二塁走者がアウトとなります。

 なおこのケースにおいて、三塁走者はセーフにも関わらず自分がアウトと勘違いして塁を離れてしまい触球されてアウト、ということが稀に見られます。プロ野球の審判員は必ずどちらの走者がアウトか明確にジェスチャーをするので、注視してみましょう。

 もう一つ、似て非なるケースを紹介します。

<ケース2>

 無死一塁で打者は犠牲バントを試みるも捕手前への飛球となる
→捕手はわざと飛球が地面に触れてから捕球し、一塁へ送球
→一塁手は一塁に触れずに送球を受け、飛球に備えて一塁に留まっていた一塁走者に触球
→一塁手は続いて打者走者が一塁に触れる前に一塁に触球
→審判員は一塁走者と打者走者の両方にアウトを宣告

 このケースでは打者走者だけでなく、前位の走者である一塁走者もアウトとなります。一塁に触れていたにも関わらず、です。ケース1では塁を占有する権利は前位の走者に与えられるとあったのに、アウトとなるのはどうしてでしょうか。

5.06 走者 (b)進塁

(2) 打者が走者となったために進塁の義務が生じ、2人の走者が後位の走者が進むべき塁に触れている場合には、その塁を占有する権利は後位の走者に与えられているので、前位の走者は触球されるか、野手がボールを保持してその走者が進むべき塁に触れればアウトになる。

 つまり一塁走者は、打者が走者となったために二塁へ進塁の義務が生じ、一塁の占有権はすでに失われていた為、一塁に触れているにも関わらず触球されてアウトとなります。

 ただし、後位の走者がフォースプレイで先にアウトになれば、フォースの状態でなくなり、前位の走者には進塁の義務がなくなります。ですので、もしケース2で一塁手が捕手からの送球を一塁に触れた状態で受けて打者走者が先にアウトなら、フォースの状態でなくなって一塁走者に一塁の占有権が復活し、一塁に触れていれば触球されてもアウトにはならないということになります。

 少し難しかったかもしれないのでまとめます。

  • 塁の占有権は前位の走者に与えられる。
  • ただしフォースプレイ、すなわち打者が走者となったために塁上の走者に進塁の義務が生じると、元の塁の占有権は失われる。

 ケース1とケース2の違いは、フォースプレイか否か、ということです。

 一塁手は内野ゴロの場合、野手からの送球を習慣的に一塁に触れた状態で受けると思います。ですがケース2においてはそれをしてしまうと、捕手がせっかく併殺のチャンスを生んだのに1つのアウトしか奪えないということになります。今回に紹介した規則を頭に入れておけば、「備えあれば患いなし」というところになりますでしょうか。

【NPB公式記録員 伊藤亮】