【コラム】強打者から学びを得てバッティングが覚醒、首位快走のオリックス打線をけん引する頓宮裕真
甘く入ったスライダーを見逃さなかった。8月5日の西武戦(ベルーナドーム)、5回表に先頭で打席に立ったオリックスの五番・頓宮裕真は今井達也が投じた初球にバットを一閃。打球は左翼ポール際に吸い込まれる13号先制ソロとなった。0対0の均衡を破る一発に「感触も良かったですし、ペータ(先発の山下舜平大)が頑張って投げていたので、何とか先制点になってくれて良かったです!」と笑顔を見せた。1対1の同点で迎えた7回一死からは四球で出塁すると宗佑磨の右前打などで三塁へ。二死一、三塁となり、若月健矢の右前適時打で勝ち越しのホームを踏んで2対1の勝利に貢献した。
8月1日の楽天戦(京セラD大阪)でも本塁打を含む3安打2打点で勝利を呼び込むと、翌日の同カードでも2安打をマーク。7月の月間打率は.188と調子を崩していたが、8月に入ると6日現在、20打数10安打、2本塁打、打率.500と復調。クリーンアップの一角として首位を快走するチームの核となっている。
2019年、亜大からドラフト2位でオリックス入団。強打の三塁手として開幕戦で球団の新人では62年ぶりのクリーンアップに抜擢されるなど期待が大きかった。だが、アマ時代は捕手がメイン。不慣れな三塁守備が影響し、打撃も精彩を欠いてしまう。故障も重なり一軍に定着できず、捕手再転向を志願した。その後は捕手のほか、チーム事情に合わせて一塁、指名打者でもグラウンドに立ち、昨年は自己最多の81試合に出場し、11本塁打をマーク。そして今季、その潜在能力が完全に開花した。
5月上旬から打率3割台をキープ。6月は打率.372、7本塁打で月間MVPを受賞し、現在は打率.322で首位打者に立つ。リーグ屈指の打力を誇るが、昨年からの最大の変化は打撃フォームだ。打つ際、左足を高く上げつつ、やや一塁ベンチ方向に伸ばす形を取り入れた。
「足を上げて待つ。その意識を持ちたかったんです。昨年は、足を上げて、そのまま下ろす感じで、左ピッチャーのときは少し間(ま)がありましたけど、今年ほど長くはなくてボールを見る余裕がなかったんです。だから、間を長く取って、ボールを見る余裕をつくろう、と。昨年は真っすぐに差されたり、タイミングが遅いことが多くて。だからといって、早くタイミングを取り、足を上げてポンと下ろしても、体が流れていくこともありました。だったら足を上げてから待つ意識を持とうと思って、自主トレから取り組んできたんです。オープン戦で結果が出て、これで行こう、と決断しました」
バッティング練習ではセンターを中心に打ち返すようになったことも打撃好調の要因だが、これにも理由がある。
「吉田(正尚・レッドソックス)さん、森(友哉)さんを見てもそうだし、基本というか、やっぱりセンターに打つことは大事なんだって。WBCに行ったピッチャー陣(山本由伸、宮城大弥ら)に聞くと、大谷(翔平・エンゼルス)さんもセンター中心に打っていた、と。スイングや構えも大事だけど、練習からセンター返しをして、自分のスイングを徹底することが大事なんだとあらためて気付きました」
球界を代表する強打者からの学びもあり、ひと回り大きくなった頓宮。そのバットがチームを3連覇へと導いていく。
【文責:週刊ベースボール】