【コラム】難攻不落の先発左腕に今季初黒星をつける一打、修正力に長ける西武のルーキー・渡部聖弥
狙っていた球種に迷わずバットを出した。7月4日のソフトバンク戦(みずほPayPay)、0対0で迎えた8回一死二塁のチャンス。ソフトバンク先発のモイネロが投じた初球のカーブを西武の渡部聖弥がとらえた打球はセンターへ抜けていった。モイネロからは今季10打席目で初安打。背番号8が開幕7連勝中の左腕に土をつける値千金の一打を放った。
「本当にいい投手なので、自分の中に迷いがあったらとらえられない。変化球一本で待っていました。今日は技術で打ったというよりは気持ちで打ったというところです」
今季、大商大からドラフト2位で入団。故障により2度戦列を離れており規定打席には到達していないが、7月7日現在、42試合に出場して打率.287、5本塁打、19打点。左足足首捻挫のため5月31日に出場選手登録を抹消されて以来、約1カ月ぶりの復帰戦となった6月27日の日本ハム戦(ベルーナドーム)ではいきなり左翼へ本塁打を放ってみせた。ルーキーらしからぬ活躍にファンも注目。マイナビオールスターゲーム2025では外野手のファン投票部門で37万4428票を集めて夢の舞台への出場を決めている。
なぜ、渡部聖はプロですぐに結果を出すことができているのか。鳥越裕介ヘッドコーチは次のように語る。
「聖弥のプレーを見て最初に思ったのは、同じ失敗をあまり繰り返さないということですね。ミスしたときにきちんと反省して、次に生かす。例えば守備において左翼を本格的に守るのはプロで初めてになります。大学時代に主に守っていた中堅と比べても打球の質に違いがある。聖弥は判断ミスを犯しても、次に同じような打球が飛んだときにしっかりと対応できる。それが彼のいいところですね」
修正力が渡部聖の大きな武器だ。3割打てば成功と言われる打撃でも、打てなかった7割に目を向けていると渡部聖は言う。
「打撃って打つ打者でも3割です。失敗のほうが多いですけど、それをどう見つめ直すかによって変わってくる。4打数2安打だったら、それでOKではなくて、打てなかった2打席を突き詰めて考える。そうすることによって4打数2安打が4打数3安打になる。シーズン中は毎日のように試合が続いていくので、常に明日につなげていくことを考えるのが必要だと思います」
どれだけ活躍しても決しておごることはない。打撃の状態が落ちたときでも、コーチやスタッフなどの助言を活用しつつ、自らのやるべきことは継続してやり続けている。
「今は三番を任せられていますが、ランナーを確実に自分のバットでホームにかえすことをやっていけばおのずと得点力も上がっていくはずです。勝負強いバッターになりたいですし、打点にはこだわっていきたいと思います」
〝獅子の若大将″がどのような成長曲線を描いていくか。将来の姿が非常に楽しみなルーキーだ。
【文責:週刊ベースボール】