【コラム】一軍デビューから全試合先発で7連勝、誰よりも強いメンタルを持つ日本ハム・達孝太
「最悪です」と苦笑いを浮かべた。7月14日の西武戦(東京ドーム)で日本ハムの先発マウンドに立った達孝太。7回一死からネビンに一発を浴び、この試合で初失点を喫したが、西武の四番には6月29日の前回対戦時にもソロを食らっていた。「次はもっと対策を練って投げたい」。しかし、それ以外の投球は抜群だった。194センチの長身から投げ下ろす力のあるストレート、キレのあるフォークにチェンジアップを散りばめ、西武打線を抑え込む。9回2安打1失点でプロ2度目の完投勝利で6勝目。「完封をしたかったので悔しいですけど、(伏見)寅威さんのリードのおかげでなんとか抑えられました」と笑顔を見せた。
昨年10月3日のロッテ戦(ZOZOマリン)でプロ初勝利。前回対戦時の西武戦で今季5勝目を挙げ、一軍デビューから全試合先発での6連勝となった。プロ野球記録を樹立したが、それを更新。さらに球団では松浦宏明以来(1985年~87年すべて救援)、2人目となる一軍デビューから7連勝。2022年、天理高からドラフト1位で入団した高卒4年目右腕が〝負けない男″として鮮烈な輝きを放っている。
「僕が求める究極のピッチャー像は負けないピッチャーです。7月6日の楽天戦(エスコンF)では5回5失点で降板しましたが、勝ち投手の権利はありました。そういうピッチャーが、本当に自分が理想としている像だなと思いながら、マウンドを降りましたね」
だからこそ、今シーズンの自身ベストゲームには、その試合を選ぶ。
「試合をつくれたか、つくれていないかで言えば、つくれてはいない。でも『マー君、神の子、不思議な子』ではないですけど、投げた試合は自分に勝ちがつかなくても勝てる、失点しても勝てる。それはある意味、試合を有利に進めているピッチャーという意味合いでもあると思うんですよね。エースとはそういう存在だと思います」
強気な性格も魅力だ。14日の西武戦では被弾したあと、山村崇嘉に四球。一死一塁となって代走・滝澤夏央にけん制すると西武ファンからブーイングが発生したが、「あまりされることがないので、ちょっと楽しくなった」と笑う。
「メンタルはファイターズの選手の中で誰よりも強いと思っています。別に死ぬわけじゃないんだからと思ったら、全然何も怖くない。ピンチのときも勝手にギアは上がりますけど、変わるのはそれくらい。むしろ、三振を取ってやろうぐらいの気持ちでいます」
かつて日本ハムにはメジャー・リーグで活躍するダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(ドジャース)というレジェンド右腕が在籍していた。彼らは背番号『11』を着けていたが、いつかはその番号を背負いたい気持ちはある。
「みんな着けたいんじゃないですかね。確かにその背番号は重いっちゃ重いですけど、でもそれを重いと感じているようではアカンなと思います」
今年の目標は10勝。だが、それも軽々とクリアする予感が漂う。9年ぶりの優勝へ突き進むチームの勢いを、さらに加速させていく存在となる。
【文責:週刊ベースボール】