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【コラム】16年ぶりの10連勝を成し遂げた阪神、Vへの先導役となる頼もしき一番・近本光司

「インコースに来ると思って、しっかり振り切りました」

 狙い澄ました一撃だった。8月10日の巨人戦(東京ドーム)、6回まで戸郷翔征の前に無失点に抑えられていた阪神打線は7回に反撃。相手のミスもあり1対1の同点に追いつくと、二死一塁で打席に入ったのは近本光司だった。カウント2-2からの5球目、148キロの内角直球を鋭く振り抜くと、高々と舞い上がった打球が右翼席へ飛び込む。6号勝ち越し2ランに阪神ファンから大歓声があがり、ベンチの岡田彰布監督も両手を挙げて大喜びだ。「追いついた直後でチームもいい雰囲気でしたし、緊張感のある展開の中で(先発の)才木(浩人)も頑張ってくれていたので、打てて良かったです」。今季、阪神は戸郷と4度対戦し、0勝3敗と勝利をつかむことができていなかった。だが、近本の一発で難敵をマウンドから引きずり下ろし、初めて勝利。チームは7連勝を飾った。

 8月11日からのヤクルト3連戦(京セラD大阪)でも近本はトップバッターとしての役割を全うした。12日には初回、四球で出塁すると、すかさず二盗。二番・中野拓夢の右前打で三塁へ進むと一死後、四番・大山悠輔の遊ゴロの間に先制のホームを踏んだ。13日も3度出塁を果たした。センターでも好守備をたびたび見せ、チームを鼓舞。ヤクルトを3タテし、阪神は16年ぶりの10連勝をマーク。2位・広島に8ゲーム差をつけ独走態勢を築いているが、その時点で8月の月間打率.327、同出塁率.400をマークしている近本の働きが大きいのは間違いない。

 チームに欠かせない選手だ。7月2日の巨人戦(東京ドーム)で右脇腹に死球を受け、右肋骨を骨折。4日に出場選手登録を抹消されたが、岡田監督は「大きな痛手」と嘆いた。さらに「監督として主力に起きる故障、ケガが最も怖い。それ以上に本人の思いというのかな。悔しいだろうし、つらいと思う。近本には、そら早く治して復帰してほしいけど、それよりも完全な状態にすること。無理はさせないし、ベストの形でまた一番に……。それまではなんとか、するしかない」と背番号5の身を案じたが、近本は22日に一軍復帰。すると落ち気味だったチーム状態が、再び上昇気流を描くようになった。

 2021年に最多安打(178安打)のタイトルを獲得し、盗塁王にも3度輝くなど実績は申し分ない。近本のバッティング能力で秀でているのは対応能力の高さだろう。穴が少ないので抑えるパターンを見つけるのが難しい。たとえ1打席目を凡打に仕留められても、2打席目で同じ攻め方だったらアジャストしてヒットゾーンに打球を飛ばす。盗塁に関してもただ足が速いだけでなく、走塁技術が高いので塁に出すとバッテリーは神経を使うことになる。

 選手会長でもある近本は人一倍、優勝への思いが強い。「去年の苦しい経験を味わっている選手も多いし、そういうのを踏まえて強くなっているのも感じています。監督が代わって強いチームとして戦っていきたいです」と開幕前には力強く宣言していた。独特な感性を持つ選手でもある。週刊ベースボールで連載コラムを担当しているがタイトルは「認知を超える」。体の動きを頭の中で認識した上で、その認識を超える動きが、高いパフォーマンスを生み出す、ということを意味している。

「イメージと違うプレーをしたときのほうが楽しい。勝手にホームランになっていたとか、勝手にヒットになったとか、そういうプレーをもっと増やしたい」

 頼もしきトップバッターがVへの先導役となる。

【文責:週刊ベースボール】