【コラム】先発転向直訴で能力が開花した助っ人右腕、異国の地で成功への思いが強い阪神・ビーズリー
首位・巨人に食らいつく2位・阪神。シーズン最終盤で連覇へ向けて負けられない試合が続くが、助っ人右腕が好投を見せた。9月15日、ヤクルト戦(甲子園)で先発したビーズリー。初回、二死三塁から暴投で先制を許したが、その後は立ち直る。味方打線が2回に佐藤輝明、前川右京の連続ソロで逆転すると、圧巻のピッチングは4回だった。先頭の村上宗隆をスライダーで空振り三振に仕留めると、オスナもカットボールで空振り三振。最後は長岡秀樹をストレートで見逃し三振と三者連続三振に斬って取った。今季は規定投球回に到達していないが、奪三振率は8.84と高水準をマーク。能力全開のピッチングでチームに勢いを与えた。
5、6回は走者を出しながらもゼロに抑え、6回2安打9奪三振1失点で8勝目をマーク。「初回は感覚がしっくりこなくて、いろいろ探りながらの投球となってしまった。徐々にいい感覚もつかめていけたし、特に今日はフォークをうまく使うことができたね。6イニングだったけど自分の役目は果たせたと思うよ」と笑顔を見せた。
2017年ドラフト30巡目指名でエンゼルスに入団し、移籍したダイヤモンドバックスとブルージェイズでメジャー通算18試合に登板した。当初は先発として育成されていたが、メジャー・デビューの20年はリリーフ登板。ブルージェイズ移籍後も9試合すべてリリーフとしてマウンドに上がっていた。昨年、阪神に入団。日本でもリリーフとして期待されていたが、レベルの高い阪神の勝ちパターンに割って入るのは容易ではない。日本で成功したいという強い思いから、球団へ直接「先発もできる」とアピール。配置転換が認められ、8月には3試合に先発して1勝1敗、防御率2.57と好成績を残した。
先発では意識を変えたという。
「それまでは、コーナーに目掛けて思いっきり投げていたんだ。でも先発をするようになって、軽くというか体全体に力を入れて投げなくても、キレのいいボールが投げられ、打者を打ち取れるということが分かったんだ。それができると長いイニングでも対応が可能になっていった。それがすごく僕にとって大きな気づきでもあった」
夏場の好投が認められ2年目の契約を勝ち取ると、今季は5月18日に一軍昇格。その後は先発として安定した投球を続けている。何よりもカットボール、スライダー、フォークと変化球の質が高い。制球が乱れて崩れる心配がなく、状態が悪いときもしっかりと試合をつくれるのが強みだ。日本で成功するタイプの助っ人投手だと言えるが、「郷に入っては郷に従え」という気持ちで日本の土を踏んだことも大きい。
「実際に、さまざまな場面でうまくいかずに怒りたくなることもある。でも、その怒りは他人には関係ないことが多いと思うんだ。それを表情などに出しても意味がないと思う。それよりも何があってもポジティブに考え、笑顔で過ごしたほうが、何かと自分のためにもなると思っている。それは人としての在り方でもある」
ナイスガイとして、チームメートからも信頼を集める。背番号99を背負う助っ人右腕が阪神を上昇気流に乗せていく。
【文責:週刊ベースボール】