【コラム】チームをVへ再加速させる先制打、「美しい野球」を体現したソフトバンク・周東佑京
「何とかチャンスをものにしたいと集中した」
打席のソフトバンク・周東佑京は意識を高めた。9月20日のオリックス戦(みずほPayPay)、2回二死二塁と先制機の場面だ。優勝マジック5としていたソフトバンクは17、18日に2位・日本ハムの前に連敗。特に18日は9安打を放ちながら伊藤大海から得点を奪えず0対3と完封負けを喫していた。嫌な雰囲気を払しょくしたい。そのためにも巡ってきたチャンスを確実に生かしたいと考えたのだ。
すると、その初球。左腕・田嶋大樹が投じた真ん中のカットボールを迷いなく振り抜いた低い弾道の打球は、右翼フェンスに直撃。先制適時二塁打に周東は塁上でこぶしを突き上げた。「みんながつないでくれたので何とかしたかった。来た球をしばこうと思っていました」。4対0の勝利に背番号23はヒーローインタビューで笑みを浮かべた。
9月22日現在(以下同)、優勝マジック1と4年ぶりのVが目前となっているソフトバンク。開幕から順調に白星を積み重ねて頂点に立とうとしているが、周東の働きは欠かせなかった。120試合に出場して、打率.269、2本塁打、23打点。何より自慢の快足でリーグトップの41盗塁をマーク。2年連続3度目の盗塁王の可能性も高まっている。さらに昨オフ、選手会長に就任。自覚をみなぎらせて臨んだシーズンだった。
「僕らの世代がいろいろやっていかないといけないというのは、以前からクリ(栗原陵矢)と2人で話をしながら、お互いに口にはしていたんです。僕らがやっぱり頑張らないとホークス自体、この先はないかな、と。このまま弱くなるわけにはいかないというのは、2人ですごく考えながら、話をしながら、やっていたので。やっぱり、僕らがどう引っ張っていけるかにかかっているのかなと思っていました」
今年、小久保裕紀監督は「美しい野球」をテーマに掲げたが、自分なりに解釈してそれを1年間貫いてきた。
「常々、言われているのは『全力疾走を怠らない』『隙を見せないように』ということです。監督だけでなく、ヘッド(奈良原浩ヘッドコーチ)にも言われているので。そういうところだとは思います。ただ、きれいに野球をやろうというのではなく、『やれることを、しっかりやろう』というところがスタートなのかな、と。それって変な話、当たり前のことなんですけど、一軍に慣れてくると少しずつ薄れていったりしていて。そういう意味では監督にそういう言葉を言われたり、あとは若い選手、特に支配下に昇格した選手を見ていると、見習わないといけないというか。自分たちもこういう時期があったなと、思い出させてもらったりしますね」
若手から刺激を受けながら、当たり前のことを当たり前にやることを継続してきた周東。選手会長が範を示したからこそ、チームは安定した戦いを続けることができたのは間違いない。
【文責:週刊ベースボール】